〈コラム〉ケン青木の新・男は外見 第52回

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男性にとってのインベストメントクロージング

前回“仕立ての良いジャケット”と書きました。大人の男性にとって価値あるインベストメントクロージングとは、“仕立ての良いジャケット”にトドメを刺すと考えています。40歳を過ぎたら、休みの日であっても家から一歩外へ出る際は、ジャケットをぜひ羽織って戴きたく。TシャツやジャンパーはNGです。そう、何は無くとも仕立ての良いジャケット、今の季節にはしっかり織り込まれた、手に持つと重みを感じるくらいのハリスツイードやフランネルなど、大人の男性の知性とたくましさが感じられる素材がオススメです。そのような重たい生地で仕立てても、着用すると軽く感じられるのが良い仕立てなのです。合わせるシャツは、襟があれば、まあ何でもOK、ボトムスもチノーズ、ジーンズ、ウールなど何でもOK、意外に簡単です。ただし靴は伝統的なグッドイヤーウェルテッド製法のものを。またジャケットでも、カシミヤやベルベットなど、柔らかさと光沢を合わせ持つ素材は“オシャレ着”として別な用途となります。
当地では、子供のころからジャケットやブレザーに親しみ、着慣れているのです。これが力を抜いて自然にジャケットを着こなす最大の秘けつなんです。大人になってからでは遅いんです。だから彼らは自分のことをキチンとした品性と教養ある男性に見せる必要がある場合、自然にジャケットに手が伸びるのですね。
正直な話、本格的に洋服の作製に長年携わっていない限り、男性の服、特にジャケットの仕立てについて良し悪しを語ることは難しいのです。したがって、皆さんは、“好き嫌い”についてお話されればよいかと思います。洋服の仕立ての良し悪しについて語るその難しさ、その最大の要因は東洋と西洋の歴史と文化、フィロソフィー、美意識の違いにあるといえるでしょうか。私たち東洋の人間にはそれらの違いを意識して勉強しない限り、縫い目がきれい、そろっている、ボタンがとれにくいなどといったさまつな表層の事柄で評価することしかできず、そしてそれらは仕立ての本質とはあまり関係がないのです。それではまた。

(次回は12月第2週号掲載)
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〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。

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