〈コラム〉体内時計の新研究パート2 エクササイズで筋肉の時計遺伝子が脳と体の健康を保ってくれる

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日本クリニック「医療の時間」第43診

前回の記事では、体内時計について、最新の研究で筋肉の中にも体内時計に影響をもたらす時計遺伝子が発見された事を報告しました。パート2では、最新のリサーチにより判明した、筋肉内の時計遺伝子を正常に保つためのいろいろな要因を報告していきます。
以下のマウスを使った実験からは、日々のエクササイズする時間が、体内時計に影響を与える事が判明しています。実験では、それぞれ不規則な時間に車輪を使って運動させるマウスと、規則正しい時間に運動させるマウスとを分けて観察した所、前者では体内時計が狂い始め、規則正しい生活を送らなくなったのに対し、後者では、まったく生活リズムに乱れはありませんでした。これにより、筋肉の時計遺伝子がメーンの体内時計(脳の視交叉上核という部位)とシンクロしている事が分かります。
さらに、エクササイズがメーンの体内時計を正常に保つのに重要な要素である事が、以下の動物実験から分かりました。
損傷した視交叉上核を持つ動物は、体内時計が崩れて不規則な生活リズムになる事が分かっていますが(前回記事パート1より)、その動物に規則的に運動をさせた場合、筋肉の時計遺伝子の働きかけにより、メーンの体内時計が強化され、規則的な生活リズムに戻る事が判明しました。また、損傷した筋肉の時計遺伝子持つ動物は、筋肉の力が30%減少し、さらに不自然な筋肉繊維を構築し、とても限られた持久力しか持てない事が判明しました。これらの事柄から、時計遺伝子が筋肉繊維の構造に重要な影響を与える要因となることも分かります。そして、人体には600以上のさまざまな筋肉が存在し体の約40%を占めます。この事からもエクササイズが筋肉内の体内時計のリズムに与える影響は多大で、健康的な生活を保つに欠かせないといえるでしょう。
健康的な体内時計のリズムは24時間周期ですが、不健康な状態では、20時間以内に縮小されると言われています(たまに、逆に拡大され27時間以上になることも)。
と言う事は、正常な睡眠時間より、3~4時間少なかったり多かったりするという事です。私たち現代人は、仕事などのストレスが要因で体内時計のリズムも崩れがちです、しかし、最新の研究からは習慣的にエクササイズを取り入れることで、筋肉の時計遺伝子が体内時計を整え、脳と体の健康を保ってくれる事が判明しています。ぜひ毎日の生活にエクササイズを取り入れましょう!
Let’s Exercise!
(参照:米国スポーツ医学学会研究報告)
(次回は1月第4週号掲載)
drvitale〈今回の執筆者〉ケン・ヴィターレ医師/Kenneth C. Vitale, MD
日本クリニック/15W 44th St. 10FL. NY,NY 10036
スポーツ医学、理学医療科、リハビリテーション科。

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