集夢計画18「飲食アート(土窯鶏)」

0

アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第23回

台湾の金門島の風景

「集夢計画」を“Pass a Dream”するため、台湾と日本を旅したときのことです。皆さん、「治国若烹小鮮」という老子の言葉をご存知ですか? 国を治めるのは料理と同じという意味ですが、中国では古代から食を大切にしていたのがうかがえる言葉でもあります。アートと食がどう融合するか、数回に分けてお話ししましょう。

ニューヨークから日本経由で台北まで、飛行機で約16~17時間、待ち時間を合わせると丸一日かかります。着いてすぐ向かったのは市内の屋台。ここの「陽春麺」が食べたかったのです。湯麺は野菜と肉が少しのった醤油味、さっぱりして、疲れた体に優しい味です。

翌日、台北で集ってくれた人たちに話をした後、故郷の嘉義(台湾の南方)へ向けて出発。これまでアートに関わったことのないような農村の人たちに話をするのが目的でした。嘉義に着くとすでに夜。ボランティアの家で、その夜はぐっすりと眠りました。

「香水の香りに包まれて眠り、コーヒーの香りで目覚める」というハリウッド映画の言葉が頭に浮かび目を開けると、日はすでに高く、自然の木々や花々の豊かな香りに包まれていました。どこからか甘い香りもしてきます。

田舎の人たちの朝は早く、4時頃に起き、朝食を済ませると仕事に出掛け、太陽が昇る頃に午前のおやつを取ります。畑のおやつはサトウキビ。雑草を燃やし、焼いていると甘く良い香りがします。私を目覚めさせたのは、焼きサトウキビの匂いでした。起きて話をして回ると、夕方戻ってくるように言われました。私のために畑で料理をしてくれるというのです。行ってみると、大きめの石を並べてコンロを作り、鍋を置いて畑で取れた新鮮な野菜を料理していました。子供時代に失敬した野菜を同じようにして、焼いて食べていた記憶が蘇ってきました。

(次回=4月21日号掲載はいよいよ「土窯鶏」の登場、乞うご期待)

林世宝

〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック

過去の一覧

Share.