集夢計画27「喜怒哀楽愛悪欲の七情発散:UZUHI」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第32回

壊れた楽器を集めて作った作品とUZUHIのメンバー。メンバーは、剛者(ボーカル)、つばさ(キーボード)、智也(ギター)、幸(ドラム)、葛城(ギター)

台湾のイベントから戻ってすぐのこと、応援者の一人であるパトリックから、5月の台湾祭で日本のグループとコラボしてほしいと電話がありました。なんでも、集夢計画に私が五感全開で取り組んでいるという言葉を覚えていた彼は、私と彼らに共通する何かを感じた様子。そこで紹介されたのがロックグループUZUHIでした。

2004年に結成され、国境を越えたロックを目指してアメリカ全土をパワフルに駆けまわっているとのこと。最初の打ち合わせに、「お役に立てれば」と言って自分が使っていた携帯電話を持ってきてくれた幸さんに思いやりを感じ、好印象の初対面でした。

芸術家も音楽家も同じアーティスト。その仕事は内にある感情を外に表すこと。平面の絵画で表現できない時は立体に、行動アートにと広げていっても、人間の豊かで無限の感情を表現し尽すのは実に難しい。人間には喜怒哀楽愛悪欲という七つの感情があり、100の形容詞を使っても言葉では語りつくせないほど複雑で、どうすれば伝わるかをアーティストは日々考え続けます。UZUHIのパフォーミングですが、激しい音楽と歌、叫びと踊りの中で、七情の全てを一度に発散できていて素晴らしいと私は感じました。聴く人、見る人を感動させ、強くたくましいパワーを与え、「餘音繞樑、三日不絕(余韻は梁のように続き、三日間絶える事はない)」。

この舞台、3・11で台湾からの温かい支援への感謝を伝えたいという意味もあったので、私は日本と台湾の友好、友情を込めて彼らのTシャツに文字を入れました。最後に、司会者が集夢計画を紹介し、携帯電話募集への協力を叫んでくれました。私自身、映画制作という果てしない夢に向かう途中で落ち込むこともある中、UZUHIとのコラボにより、前を向いていこうという力をもらった気がします。観客からは落雷のような拍手が湧きあがり、共感と共鳴がいつまでも残りました。UZUHIのみんな、どうもありがとう。

(次回は10月12日号掲載)

林世宝

〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック

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