集夢計画86「獅子王」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第91回

「獅子王」の前で。(左から)筆者、陶芸家の朱品馨(Chu, Pin Hsin)、陶芸家の郭家瑄(Kuo, Chia Hsuan)

「獅子王」の前で。(左から)筆者、陶芸家の朱品馨(Chu, Pin Hsin)、陶芸家の郭家瑄(Kuo, Chia Hsuan)

クリスタルパークのユートピアに「獅子王:ライオンキング」を制作中。友人から「獅子の像が38体あるけど、アートに使える?」と申し出があり、「もちろん喜んで」と譲り受けたものを山に運びました。この獅子たちはその昔、レストランなどの入り口に立ち店を守っていたのですが、閉店などで役目を終え、倉庫に集められて眠っていました。縁あって私のところに来たので、再び仕事をしてもらおうと思います。

ストーリーは、火山が噴火して溶岩が噴き出る中、獅子王を守ろうとする近衛兵たちが、王を塔の一番上に導き、その周りを囲んで護衛している姿。しかし溶岩流の勢いはすさまじく、守りの態勢のまま溶岩に固められてしまった様子で、「協和」、「ボスへの忠誠心」を表現します。

土台の柱は、中央に大きな岩を重ね、周りを鉄筋と木板で丸く囲んで枠を作りコンクリートを流し込み固めました。写真はちょうど木枠をはずしたばかりで白っぽいですが、この後、近衛兵の獅子を配置し、溶岩が流れる様子を墨流しの手法を使って表現する予定です。今回の素材もコンクリート以外はすべてリサイクル。廃棄素材を有効に利用したハート集結シリーズの作品に加えられます。アートは自然界から出てきたもの。38体の獅子は山にきて原点に返ると考えます。「輪廻転生」、「原点回帰」、「本来無一物」。地球のものはすべて自然から生まれ自然に帰る、原点に戻る、最後は無となりまた生まれ変わる。

こういう話をしていると、若いアーティストが「一緒に作っていいですか」と制作参加を希望。郭家瑄(Kuo, Chia Hsuan)はThe Art Students League of New Yorkで講師を務める陶芸家。今年、19th Tokyo-New York Friendship Ceramic CompetitionでFirst Prizeを受賞した前途有望なアーティストと一緒に仕事ができることを楽しみにしています。完成をお楽しみに!

(次回は9月16日号掲載)

林世宝

〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック

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