NYで「漁港の魚屋」目指す

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「そこで釣れた魚」を食べるライフスタイル
クラウドファンディングで挑戦

魚屋

扱う魚の一例

「ニューヨークは水に囲まれているのに、どうしてここの魚を釣らず、空輸した魚を食べているの? それが理解できませんでした」。こう話す原口雄次さん。ニューヨークでは魚介類の風味を生かした独特のメニューで知られる「YUJI Ramen(ゆうじラーメン)」や、仕入れた素材によって毎日メニューが変わる一汁三菜定食で話題となったレストラン「OKONOMI(おこのみ)」のオーナーとして彼の名前を知る人も多い。

魚屋

市場で仕入れるマグロを吟味する原口雄次さん

米国で魚の卸売と流通に長く携わってきた経歴を持つ原口さん。ノルウェーなどから空輸される魚をたくさん目にして先の疑問が湧き、答えがひらめいた。

見事な手さばきで魚をさばく従業員

見事な手さばきで魚をさばく従業員

米国の食文化の中にはもともと、日本のようにバリエーション豊かな魚料理のレシピが存在しない。そこに近年になりSushiなどの和食文化が一部入ってきた。この時、魚と共に暮らし、魚の命をいただく「ライフスタイル」が入ってくるのではなく、“Sushiをレストランで食べる”というような「様式」のみが上陸した。その結果、レシピ本にない魚は、食べ物とみなされず釣れても捨てられてしまうようになったわけだ。

例えば、ホウボウという魚。上質な白身が特徴で、日本では高級魚として扱われる。ニューヨーク近郊ではとてもよく釣れる魚の1種だが、さばき方も食べ方も知られていないため、捨てられてしまう。一方で、ニューヨーク近郊では捕れないマグロやサーモンなどは、わざわざ冷凍し、保存料に浸け、ガソリンを大量に使って運んできて食べているのだ。

地元の市場で仕入れたサバ

地元の市場で仕入れたサバ

原口さんは今、この状況を変えるような「場」をニューヨークに作ろうとしている。理想は「漁港にある魚屋」。3月31日まで、クラウドファンディングで開業資金を募集している。

近所で釣れた魚を釣り人が持ち込む。知らない魚があったらどう食べたらおいしいの? と聞くと、漁師や漁師の奥さんが教えてくれる。ニューヨーカーのために魚料理の料理教室も開催したい。自分でさばけない時はさばいて売ってくれる。近くには料理店もあって、その日、揚がった魚を新鮮なうちに味わえる。これが私たち日本人の思う本当の意味での「魚を食べる暮らし」で、これが実現できれば、地元に新たな産業や雇用も生まれることだろう。

新たな場づくりを、原口さんは新店舗の魚屋、「OSAKANA(おさかな)」からスタートしようとしている。すぐそこで釣れた魚が生活の中にあり、新鮮においしくいただける…。本当の魚食文化と産業が、近い将来きっと原口さんのおかげでニューヨークに根付いていくだろう。

ファンディング締め切りは31日

「魚屋」の完成予想図

「魚屋」の完成予想図

3月31日のファンディング締め切りまで後2週間を切った「OSAKANA」プロジェクトへの協力はこちらのサイトから
www.kickstarter.com/projects/yujiharaguchi/osakana

米国のクラウドファンディング・サービスを使用しているが、米国クレジットカードのみならず、日本のカードでも募金可能。

オーナーの原口雄次さん(右端)と従業員

オーナーの原口雄次さん(右端)と従業員

◎情報
【店舗住所】150 Ainslie St. Brooklyn, NY,11211
OKONOMI(おこのみ)
【営業時間】月―金曜 午前9時〜午後3時、土日 午前10時〜午後4時
YUJI Ramen(ゆうじラーメン)
【営業時間】月―金曜 午後6時〜11時
【Eメール】info@okonomibk.com

(2016年3月26日号掲載)

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