阿部知代(2)

0

NYに意志を持って来た人たちの思いや魅力を伝えたい

「ガチ!」BOUT. 177

 

L_FCI9571

 

FCI(Fujisankei Communications International, Inc.)では、米国および欧州に住む約60万人の日本人を対象に、日本語によるニュース情報番組を毎日放送している。2007年から放送してきた「FCIモーニングEYE」が、今月4日から、「FCI News Catch!」として生まれ変わった。また阿部知代キャスターがインタビューする新コーナー「THE INTERVIEW~わたしがここにいる理由~」も始まった。そこで、新番組と新コーナーについて阿部キャスターに話を伺った。(聞き手・高橋克明)

 

「News Catch !」スタート

2年前こちらに赴任されて以来のインタビューです。

阿部 そうですよ! 丸2年です。早いですよね。

インタビューのプロにインタビューするというヘンな緊張がいまだに…。

阿部 もう!(笑)。ヤメてください。2年前にも同じフレーズをおっしゃってましたよ(笑)。何でも聞いてください。(にっこり)

この2年間は短かったですか。

阿部 あっという間です。最初の半年は生活を始めるにあたってそれこそ家とか、保険とか、電気、インターネット、いろんな煩雑なことしなきゃいけなかったですけど、それらがクリアになった半年後くらいには、どんどん生活のスピードも早くなっていく感じで。

ご自身から希望を出されての赴任。2年前は街を歩くだけで幸せとおっしゃってました。

阿部 この街は最高です。顔に書いてあるでしょ「た・の・し・い」って。(笑)

帰国なされたくないですか(笑)

阿部 帰りたくないです。もう、大きい声で、(レコーダーに近づいて)「帰りたくないー!」。うちの人事が読んでくれますように。(笑)

あ。そんな影響力ないです、ウチの新聞(笑)。今回は8月からスタートした新番組「FCI News Catch!」についてお話をお聞きしたいのですが。阿部さんのキャリアですと過去さまざまな新番組に関わってこられたと思います。

阿部 日本では確かにそうですが、この日本語放送はもう30年以上続いていて、前の番組「モーニングEYE」は私が赴任する前にすでにスタイルもでき上がっていて、私はそこに加えていただいてご迷惑をかけないようについていくことで精一杯でしたので。今回は本当に立ち上げから関わることができて、やりがいも感じていますし、なにより光栄ですね。

阿部さんweb_FCI9577の企画「THE INTERVIEW〜わたしがここにいる理由〜」も始まりました。この「〜わたし〜」は阿部さんがインタビューする相手をさしているわけですよね。

阿部 そうです。すでに(取材)した、(中村)七之助さんであり、加治屋(百合子)さんであり。

このタイトルに込められた思いは何ですか。

阿部 私はグリーンカードも持ってないし、シチズンでもない、言ってみれば「一時的にここに暮らしてる者」なんです。でも、やはり興味があるのは、この街に自分の意志で来た人。あるいは何らかの運命で来てしまった人。あるいはここで自分の仕事なり、プロジェクトなり、やりたかったことを、叶(かな)えようとしている人、叶えた人。そういった人たちに「あなたはなぜアメリカを、ニューヨークを選んだんですか。なぜ、今ここにいるのですか」、と。そこを聞きたいなって思いました。

なるほど。

阿部 ここで根を張って暮らしていらっしゃる人や(暮らしていなくても)何かの思いを持っていらっしゃった人。(1回目の)中村七之助さんがそうです。ある使命を持ってこの街に来られた。先日の「平成中村座」のニューヨーク公演は、今回も本来ならば、亡くなった勘三郎さんが一緒にいらっしゃるはずでした。でもご兄弟が中心となって立派にお勤めになりました。

web_FCI9526

阿部さんは、過去2回(の2004年、07年の公演)も日本から観に来られてるんですよね。

阿部 はい。3回目の今回、まさか自分がニューヨークに住んでいるとは思いもしませんでしたし、言葉にできないくらいいろんな思いがありますから。なので、初回のゲストが七之助さんというのは、とても自分勝手な解釈ですが、勘三郎さんからのプレゼントのような気もしているんです………。ゴメンなさい(涙)。このタイミングで七之助さんにお話を聞けて良かったです。

運命的なタイミングですね。

阿部 勘三郎さんとは親しくさせていただきましたし、七之助さんもご一緒に何度もお食事させていただきましたから。歌舞伎の中村家に生まれた運命、そしてこの時期にニューヨークに来たという運命。そういうものを背負って来た方に、昔から舞台を拝見してきた私が、このタイミングでお話を聞けるのも運命だと思ってます。(2回目の)加治屋さんに関しては、私、お恥ずかしいのですが、バレエってあまり日本で観ていなかったんです。で、ニューヨークに来てABT(アメリカン・バレエ・シアター)をよく観にいくようになって、加治屋さんの舞台も拝見するようになって。ちょうどこの企画を書いてる時期だったので「出ていただけたらいいなぁ」と思ってメールのやりとりをしていたんです。でも、今シーズンから彼女はヒューストンに移籍することになっていたので「これは無理だ」って一度は諦めて。もうあと数公演を残すのみという時に観に行ったら、バックステージに入れてくださって、“ダメもと”でもう一度「加治屋さんにはやはり出ていただきたかったんですよ」と言ったら、「時間を調整してみます!」って言ってくださって。放送開始の8月には彼女はもうヒューストンなんですが、せっかくいただいたご縁を無駄にしたくないと思ったんです。「なんとか2、3時間でいいのでお時間作ってください」って、あらためてお願いしたら、加治屋さんがすごく協力してくださって。ABTのレッスン室も、コーチとの個人レッスンも、インタビューも、ABT最後の公演やカーテンコールも、全部撮らせていただくことができました。それって本当に奇跡的で、感謝しています。

web_FCI9496

お話を聞くと、余計観たくなります。(笑)

阿部 私がささやかに書いた企画ですけど、本当に多くの人が育ててくれて、うれしいしありがたいです。

インタビューされる時に一番気を付けてらっしゃるところはどこでしょうか。個人的にも勉強したいので。

阿部 勘弁して下さい(笑)。実はこの「THE INTERVIEW〜わたしがここにいる理由〜」って、企画書の時は「“あなた”がここにいる理由」だったんですよ。あなたはなぜ、ここにいるんですか?って、それを聞きたいのが始まりだったので。でも、いろいろ進めていくうちにどうもシックリ来ないんですよ。

「あなたが、」だと聞き手が主語になっちゃいますね。

阿部 そうなんですよ。あくまで主役は相手ですから。その方の思いや、魅力、それがきちんと伝わるようにインタビューできれば、っていうとおこがましいですが(笑)。それで「わたしがここにいる理由」に途中で変えたんです。

なるほど。それではこの2年間で一番印象に残った取材は何でしたか。

阿部 うわぁ、なんだろう、なんだろう、なんだろう…。

数えきれないですよね。だって僕、ニューヨークの主要なイベントに取材に行ったら、必ず、阿部さんにお会いしますから。

阿部 ごめんなさい、暇で(笑)。でも舞台だけで今年70本観てますので…。

70本! 今年だけで!…。DVDでもそんな観られないです。

阿部 ライブを。そうですね、70本以上行ってますね。

取材以外で、ですよね。

阿部 ちゃんと、自分のお金で行ってますよ(笑)。はい。

その中で、一番印象に残っているライブは、

阿部 (さえぎるように)中村座です。もう、別格ですね。私の中の歴史が違うので。最初から、もう、ずっと泣いてました。(笑)

ロビーには勘三郎さんの写真が飾られていましたよね。

阿部 あそこでまず泣いてしまって(笑)。で、舞台でも泣く(笑)。あの写真のポーズ、よくなさっていたんですよ、実際に。「ありがとねー」って。思い出しちゃいました。

最後に、いつもご覧になられている視聴者にメッセージをお願いします。

阿部 「FCI News Catch!」と装いも新たに今月4日にスタートしました。今までよりたっぷりニュースをご覧いただくことができますし。久下も私も、自分の企画を精一杯取材して、放送していますので、ぜひこれからもご高覧いただけるとうれしいです。

 

番組情報
newscatch_logo_6.16

今月4日にスタートした「FCI News Catch!」。日本からの最新ニュースは番組単位で分かりやすく紹介。
新企画では、キャスター久下香織子、阿部知代がアメリカ生活に役立つ情報をお届けするなど、充実した番組内容となっている。
Untitled-1The-Interview-Logo-black-2

米国で活躍している人物や、米国を訪れている日本の著名人たちに阿部知代キャスターがインタビューする新コーナー。「私がここにいる理由」をテーマに、彼らのライフストーリーを掘り下げる。
【ウェブ】www.fujisankei.com

 

★ インタビューの舞台裏 → ameblo.jp/matenrounikki/entry-11903525440.html

 

阿部知代(あべ・ちよ) 職業:キャスター
群馬県桐生市出身、フジテレビアナウンサー。2012年8月よりFCIニューヨーク本社に出向、さまざまな番組で活躍中。趣味は写真、美術・舞台鑑賞、俳人としての一面もある。シャンパン、ワイン、日本酒をこよなく愛し、08年には名誉きき酒師酒匠を受任した。
公式ウェブ:www.fujisankei.com/blog-abe/

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

(2014年8月23日号掲載)

(写真撮影:鈴木貴浩)

 

Share.