ジェニファー・リー

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主題歌「Let It Go」はエルサのキャラクター設定まで変えました

「ガチ!」 BOUT. 169

 

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全米で昨年11月27日から公開され、世界全体での興行収入が12億ドルを突破したディズニーのアニメーション「FROZEN(アナと雪の女王)」。今年の米アカデミー賞で長編アニメーション賞と主題歌賞(「Let It Go(ありのままで)」)に輝いた。全世界では「トイ・ストーリー3」(ディズニー/ピクサー)を抜いて歴代アニメーション興行収入第1位を記録、日本でも興行収入200億円に迫る勢いなど、社会現象を巻き起こし、今もなお躍進が続いている。ミュージカル仕立てで、しかもディズニー長編アニメ初のダブルヒロインとなる同作品を脚色し、感動のドラマに仕立て上げたのは、「Wreck-It Ralph(シュガー・ラッシュ)」で脚本を担当したジェニファー・リー監督。ディズニー長編アニメ53作目にして“初”の女性監督でもあるリー監督。先日、母校コロンビア大学でのイベント出席のためニューヨークを訪れた際、お話を伺った。

大ヒット「アナと雪の女王」でディズニー長編アニメ初の女性監督

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 「アナと雪の女王」のサウンドトラックが米ビルボードで13回も首位を獲得するなど、ディズニーの中でも特にミュージカル色の強い作品に仕上がっているように感じました。

リー監督 そうですね、楽曲制作にはとても長い時間をかけました。ロバート・ロペス(作曲家)とクリステン・アンダーソン=ロペス(作詞家)とは約14カ月間、毎朝2時間半、インターネット電話で話し合いをしながら(オリジナル歌曲10曲を)作り上げました。楽曲が持つ力がストーリーラインをかなり左右するので、ここにはとても力を入れましたね。せりふでは語れない心情を豊かに表現できたと思います。

 特に雪の女王のエルサが歌う「Let It Go」は、アカデミー賞(主題歌賞)も受賞し、世間でも大ヒットしました。

リー監督 この曲を手掛けるまでエルサは悪役だったんです。でも、クリステンからエルサに共感できる曲を作ったらどうかと提案されたんです。そこから描いた曲がエルサのキャラクターまで変えることになり、ストーリー展開をも変えてしまったんです。

 ディズニー史上初のダブルヒロイン作で、その上、王子様がプリンセスを助けるというようなディズニーの王道のストーリーラインでもなかったですが、脚本を書く上でどこを意識されましたか。

リー監督 そうですね、ディズニーで働く、姉妹を持つ女性社員に大々的な聞き込み調査をしました。そして、姉妹ならではのエピソード、「昔は仲が良かったのに今は疎遠になっている」とか「両親より近い存在」など、さまざまな関係性を聞くことができました。そこから、性格の違う、アナ(妹)とエルサ(姉)といった少し距離のある姉妹関係ができ上がり、家族愛を表現することができました。なので、男女愛だけでなく、姉妹愛、家族愛の存在をこの作品で伝えることができたかと思います。

 アナ、エルサ、オラフ(雪だるま)など愛くるしいキャラクターがたくさん出てきます、それぞれのキャラクターをどのように作り上げたのですか。

リー監督 なんと言っても、俳優のジョシュ・ギャッドを(オラフ役に)キャスティングできたことはとても大きかったですね。声優が決まる前にオラフのキャラクター設定はすでにしていたのですが、ジョシュが実際に現場に入ってから、オラフのキャラクターがどんどん作り上げられました。これはアナ役も同じで、クリスティン(・ベル)のちょっとせわしない話し方や、女の子らしい慌てっぷりなんかは、アナそのものです。役そのものに俳優たちが息を吹き込んでくれて、すてきなキャラクターができ上がりました。

世界的に大ヒットして、ファンの間では続編を期待する声が多数上がっているようですが…。

リー監督 残念ながらその予定はないんです。この作品はこれで完結。伝えたいことを全て入れましたから(笑)。でも、ブロードウェー・ミュージカルにできないかという案があります。具体的なスケジュールは未定ですが、素晴らしい楽曲が詰まっている作品なので、可能性があると話しています。楽しみにしていてくださいね。

ジェニファー・ミッシェル・リー(Jennifer Michelle Lee) 職業:映画監督、脚本家 1971年生まれ。30歳の時、コロンビア大学で美術修士号を取得後、映画の道へ。2010年「Wreck-It Ralph」の共同脚本を手掛ける。続く「FROZEN」では当初、脚本家として参加していたが、クリス・パック監督からの指名で、監督としても関わることになる。第86回アカデミー賞長編アニメ映画賞を獲得。ディズニー長編アニメ初の女性監督。

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2014年5月24日号掲載)

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