MIKIKO ニューヨークで生きる指針を取り戻せた

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MIKIKO

 

BOUT. 284
演出振付家 MIKIKOに聞く

主宰のダンスカンパニーNY公演が大盛況

「恋ダンス」やPerfumeの振付師としても知られる、演出振付家のMIKIKOさん。先日、自身が率いるダンスカンパニー「ELEVENPLAY(イレブンプレイ)」のニューヨーク公演を行い、追加公演も行われるなど注目を集めた。「東京2020開会式・閉会式4式典総合プランニングチーム」に就任するなど、日本を代表する演出振付家として活躍するMIKIKOさんに、作品作りについてや、海外で活躍すること、またニューヨークの思い出など、お話を伺った。

 

「ELEVENPLAY」のニューヨーク公演の模様(Photo by Mariah Tiffany)

 

北米ツアーお疲れさまでした。終わってみていかがでしたか。

MIKIKO アメリカって都市によって(反応も)本当にさまざまで、でも、ニューヨークのお客さんがいちばん集中力すごかったですね。1曲目が始まって終演まで、皆さん、ぐーっと引き込まれていかれている感じがこちらにも伝わってきて。感動しました。

終演後には、スタンディングオベーションでした。

MIKIKO 手応えはあったんですけど…。でも、意外でした(笑)。すごくうれしかったです。

これだけ反応が良いと、またニューヨークに戻って来たくなりますね。

MIKIKO 今回をきっかけに、また新しい作品で呼んでもらえたらいいなと思います。他の作品も見てもらいたいなって、また新たな夢が出来ました。

振り付けをされる時に、いちばん大切にされることは何でしょう。

MIKIKO そうですね…難しいですけど…ELEVENPLAY(イレブンプレイ)ならELEVENPLAY、PerfumeならPerfume、星野源さんなら星野源さん、それぞれの曲と踊る人のキャラクターに集中してそれぞれの魅力に忠実に振り付けをしたいってことですね。

MIKIKOさんの振り付けには、いつも独特の世界観を感じます。日頃、どういったところからインスパイアされているのでしょうか。

MIKIKO 振り付けている相手の日常の仕草や動きの癖からヒントをもらうことが多いです。今回のようにテクノロジーと融合した作品の場合はどういう読後感を残したいか?を決めた後、その中でダンサーがどういった役割を担うべきかを決めて振り付けていくので、その想像力を鍛えるためにも読書をすることが私の源になっています。

確かに、最初は技術のすごさに目が行きましたが、後半はずっとダンサーたちを目で追ってました。Perfumeさんのニューヨーク公演でも、映像とダンスがピタリとシンクロされた時にいちばん歓声が上がっていましたし。

MIKIKO ニューヨークに住んでいた10年前、ブロードウェイの作品を全部観て、オフ・ブロードウェイの作品も観て回ったんですけど、逆説的にここに、日本から何を持ってくるべきなのかって、どこかでずっと考えながら生活していたんです。帰国してからも、10年間ずっと、それを試行錯誤してきて、で、今このスタイルになったんです。

確かに、アメリカにはなかったスタイルで、テクノロジーとダンスの相性が非常にいいとニューヨーカーは気付かされたんじゃないでしょうか。

MIKIKO もちろん、ニューヨークだけじゃなく、世界中の全員に共通して感じられるように作ってきているんですけど、この10年掛けて作ってきたものを、ここ、ニューヨークに持ってこれたことと、彼らの反応を感じられていることこそがうれしい。今、世界中で反応を見て、もちろんリアクションはそれぞれ違うんですよ。でも最後にみんなが受けている印象みたいなのは共通する部分があるんですよね。

当時、この街で舞台作品を見続けたことも作品に還元されているのですね。

MIKIKO はい!(それらに)すごく影響を受けていると思います。今回も、10年前に自分が歩いていた道をまた歩いて、でも感じることはまた違って。慌てなくて良かったな、なんて思ったりして、はい。(にっこり)

そして、いよいよ来年はご自身が開閉会式の演出を担当される東京五輪・パラリンピックが開幕されます。今もお忙しい真っただ中だと思うのですが。

MIKIKO 今、それぞれの畑での第一人者が集まって、作り上げているので、すごく楽しくはあるのですが、改めて(世界に)作品として「TOKYO」の何を見せるべきかというのは、すごく難しい…。

以前、ニューヨークで暮らしたMIKIKOさんから、現在、在米の読者にメッセージをお願いします。

MIKIKO 旅行で来るニューヨークと生活するニューヨークは全く見え方が違って、住むとなると相当な覚悟とエネルギーが必要な街ですよね。でもその分、やりがいも生きがいもある街なんだな、と今回再確認できました。私は東京で生まれて、広島で育ち、東京、ニューヨーク、東京、と過ごす中で、場所にとらわれずに作品を作っていけたらな、とずっと思っていて、なのでダンスという非言語の表現を選択しているのだと思います。でも、いま東京に住みながら制作していると、自らアイデンティティーにとらわれにいっている瞬間があって怖くなることがあります。でも今回こうしてニューヨークで作品を発表したことで、10年前にこの場所で抱えていた葛藤がフラッシュバックしてきて、生きる指針を取り戻せました。また作品と戻ってこられるように、そしてこの街に住む皆さんに届くことを次の夢にしたいと思っています。ありがとうございます。

MIKIKO

★ インタビューの舞台裏 → ameblo.jp/matenrounikki/entry-12485680543.html

 

MIKIKO 職業:演出振付家
ダンスカンパニー「ELEVENPLAY」主宰。Perfume、BABYMETALの振り付け・ライブ演出をはじめ、さまざまなMV・CM・舞台などの振り付けを行う。メディアアートのシーンでも国内外で評価が高く、新しいテクノロジーをエンターテインメントに昇華させる技術を持つ演出家として、ジャンルを超えたさまざまなクリエーターとのコラボレーションを行っている。
公式サイト:https://www.mikiko0811.net/
イレブンプレイ公式サイト:https://elevenplay.net/

(2019年6月15日号掲載)

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