着床前染色体検査がつくる未来

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妊活のとびら NY不妊治療ストリーズ 第18回

前回=7月9日号掲載=、遺伝子疾患のない子供を授かるための着床前遺伝子診断(PGT-M)や妊娠前の遺伝子検査についてお話ししたが、今回はそれら遺伝子が太く折り畳まれた「染色体」と着床前に行う染色体検査の重要性についてご紹介したい。

染色体異常とは

染色体とは遺伝子の集合体のことで、ヒトはみな通常23対(46本)の染色体を持つ。男女共通しての1~22番までの常染色体と男女の性別を決定する性染色体を両親から1本ずつもらうので各染色体が2本ずつ(性染色体は女性がXX、男性がXY)となるのが、それらの数が1本でも多かったり少なかったりすると不都合が生じ、受精卵(胚)はうまく成長しない。多くは着床できず、仮に着床できたとしても妊娠初期での流産や死産となってしまったり、ダウン症やターナー症候群などを持った子供を授かることとなる。

年齢と共に増える染色体異常

染色体数異常の根本的な原因はいまだ解明されてはいない。しかし、高齢出産との関係性は明らかで、35歳以上の女性からの受精卵(胚)の実に6割以上に染色体異常があると言われている。近年、妊娠・出産の高齢化に伴い、体外受精(IVF)を試みる女性も増えているが、「何度胚を移植しても妊娠に至らない」「着床しても流産を繰り返してしまう」という声をよく耳にする。その大半の原因がまさに染色体異常なのである。現に、なかなか妊娠しないと当クリニックを訪れる方のうち、IVFで多くの卵子は採取できたものの、受精後、PGT-A(着床前染色体数異常数性検査)を行ったところ、その大半もしくは全ての胚が染色体異常を持つという結果を受けた方は少なくない。そういった染色体異常による不妊を未然に防ぎ、IVFを成功に導くために行われるのがPGT-Aである。

染色体異常の有無を識別

PGT-Aは胚の染色体数を調べる検査で、染色体数の異常を持つ胚を識別し、異常のない胚だけを子宮に移植することで流産を減らし、IVFの成功率、着床率、妊娠率、そして染色体異常による疾患のない健康な子供の出生率を飛躍的に向上させることができる。同じ着床前染色体検査であるPGT-SRは、染色体の構造異常を調べる検査でPGT-Aとは異なる。

また、妊娠確定後に行うNIPT(新型出生前診断)とも別物。NIPTは遺伝子異常の確率を計るのみの非確定的な診断であるのに対し、PGT-AはIVFの過程において採取した胚の段階で胚の染色体異常の有無を調べる検査で、その精度は80~90%と言われている。

日本でも問われ始めた必要性

米国ではPGT-Aによる正常胚の選別がIVFの成功率や妊娠率の向上、そして染色体異常のない健康な子供を効率的に授かるためのオプションとして、希望する全ての人が受けることができる。

一方、日本でもここ数年その必要性を問う声が高まってきている。米国においての目的や条件とは少し異なるものの、着床前の染色体検査を否定してきた産婦人科学会もついに今年、複数回の胚移植不成功や反復流産、また染色体構造異常例をもつ女性のみを対象とした限定的なPGT-Aを承認するという新たな見解を発表した。

世界中で高まるPGT-Aの必要性。米国で早く確実に妊娠したい、そして健康な子供の出産を望む35歳以上の女性にはぜひともお勧めしたい。

(次回は9月第2週号掲載)

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