中山加奈子

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ギターは〝相棒〟、音楽やロックとは一生一緒に

「ガチ!」BOUT.78

 

中山加奈子

 

解散から15年。国民的人気バンド、プリンセスプリンセスの元ギタリストで、現在ソロ活動を行なう中山加奈子さんが9日、ニューヨークでライブを行なった。作詞家、作家、プロデューサーとして活動する傍ら、ソロ活動も行なう中山さんに、ライブ翌日、プリプリ時代を振り返りながら、今の音楽に対する思い、大好きだというニューヨークについてお話を伺った。(聞き手・高橋克明)

 

元プリプリ、NYライブの思い

昨夜はお疲れさまでした。ライブ後の感想を聞かせてください。

中山 “やっぱり良かった~”って感じです。8年前にライブで来た時、日本よりも観客の反応が良くて、それが忘れられなくて、今回また来たようなもんですから。8年前も、ものすごく緊張してたんですけど、終わった後にすごい拍手をもらって。それでいい気になっちゃったんですね(笑)。それ以来、8年間ずっと来たくて来たくて(笑)、昨日やっとかないました。

日本中を席巻したあの時と比べても、昨日の方が反応がよかった、と。

中山 そう! それがうれしいですよね。肩書のない私に拍手をもらえることがうれしくて。こっちの人は感情を表に出すっていうのもあると思うんですけど、特にこの街の人は私が元○○だとか関係なく、いいものはいい! 楽しいじゃん! って表現してくれる感じがありますね。

プリプリ時代と今、音楽に対する思いに何か変化はありますか。

中山 音楽やロックに対する気持ちは何も変わらないんですけど、昔に比べて他の選択肢がなくなった分、もうこれしかない、という気持ちが強くなってる気がします。これと一生かかわっていくんだろうな、とあきらめてるところがありますよね。

いい意味のあきらめというか、もうジタバタしても私には音楽しかロックしかない、という。

中山 そう。もともと他の選択肢があったわけじゃないんですけど、46歳になる今、これと一生一緒に生きていくんだなという気持ちですね。プリプリを解散してもう15年という月日が流れているわけですから。

“プリンセスプリンセス”というネームバリューは、一生音楽しかないと思っている中山さんにとっては、メリットにもなるし、重荷にもなることがあるんじゃないかと思うんです。中山さんご自身はその国民的なスーパーバンドだったという過去をどう受け止めてますか。

中山 確かに解散してから、インディーズでバンドをやっていても、もうアレじゃないのに、いつまでもアレを求められてる気がした時はありました。でも、もう時間も経って今となっては恩恵の方が大きい。もし、あの過去がなければ今日もこうやって取材してもらうこともなかっただろうし、いろんないい面のほうがだんだん目立ってきたから、今はわりと自分の中で受け止められて生きていますね。時間はかかったかもしれないけど。

ニューヨークでのライブ(photo:KAZ)

ニューヨークでのライブ(photo:KAZ)

大きな質問していいですか?

中山 なんでも。

中山さんにとってギターってなんでしょう?

中山 ホント、大きな質問ですね(笑)。前は“武器”って言ってたんですけど今では“相棒”のような気がする。本当はこれがないと怖くてステージにも立っていられない気の小さい女で、だから“相棒”なんです。思えば30年弾いてんだなって。男はいっぱい変わったけど、ギターはずっとここにあったなって。

相棒、ですね(笑)

中山 はい(笑)。ギターの種類は変わりましたけど、ギターという存在はずっと、私の横にあったなあって。だから、武器じゃなくて本当の相棒、です。

今まで数え切れないステージを経験されたと思いますが、一番印象に残っているステー…。

中山 (被せるように)昨日です! 昨日が一番。緊張も一番だったし、反応も一番だったし。

それは、大好きな街になりますね。

中山 はい! 大好きです。毎回来ると、その後、半年くらい元気なんです、私。夢を持った人が集まる街って感じで、特に音楽に対する情熱やエネルギーを確実にもらえますね。(日本に)帰ってからしばらくは小さなことが気にならなくなる。“目標は一つでしょ”“うん!”みたいな(笑)。あとはライブハウスも日本と比べて、音がいいんですよ。やっぱり違うと思います、音楽に対する何か基本的なことが。だから定期的に来たいんです。

もう、住んじゃう条件そろってますね。(笑)

中山 ねー。友達もいるし、メンバーもいるしねー。(笑)

最後に。日本中を沸かしたあのころと、本当に好きな音楽ができる今と、どちらが楽しいでしょう。

中山 う~ん…。どっちも! アレは特別な夢だったと思うし、すごくいい夢を20代のころに見せてもらったんだなって。そこからは自分の本当のやりたい事ができていて、両方経験できたことはすごく幸せです。だから、今は小さなライブハウスでもやることに、どさ回りでかわいそうと思う人もいるかもしれないけど、でも私は本当に幸せだなあって思ってるんです。

 

中山加奈子(なかやま かなこ) 職業:ミュージシャン、ギタリスト
1964年生まれ。元プリンセスプリンセス(プリプリ)のギタリスト。在籍中は「ダイアモンド」「ジュリアン」「パパ」などの作詞も担当。プリプリはアルバム13枚、シングル21枚、計561本のコンサート、のべ18万3300人を動員し96年5月31日解散。解散後ソロ活動を経てVooDoo Hawaiians結成。ボーカル&ギターを担当する。ライブ活動を中心に4枚のアルバムをリリースしライブ活動。その傍ら作詞家としての作品提供、執筆、作詞プロデュースなども行う。2008年よりソロ活動を中心にアコースティック&バンド形態問わず活動中。公式サイト:www.kanakonakayama.com

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2010年9月25日号掲載)

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