〈コラム〉中川扶二夫 「逃げない、がKeyword」第17回

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商品で「人をハッピーにする」

7月は激しい夕立の多い時期です。雨のたびに昔読んだビジネス書に書いてあった「雨が降ったら傘を2本持って出ろ」というフレーズを思い出します。1本は自分の為に、もう1本は売るために!
確かに急な雨なら傘は売れるでしょう。これを「人の弱みにつけこんで酷い人だ」と思うのか、それとも「雨の日に傘を売って親切な人だ」と思うのか、考え方によってモチベーションが変わるという内容でした。
商売とは人の弱みにつけこんだり足元を見てするものではなく、人々が必要な物を必要な時に提供することです。暑い日に外を歩いていると冷たいものが飲みたくなり、そこに涼しいカフェがあれば、これを人の弱みにつけこんだ商売と思う人はいないはずです。ニューヨークでは、雨が降るや路上で傘を1本5ドルで売る人があっと言う間に出てきます。私も最初は人の弱みにつけこんで…などと思ったものですが、今ではタクシーも捕まらず、地下鉄の駅も遠い時、迷わずありがたくこの傘を買います。たとえば誰かと待ち合わせをしている時の突然の雨、傘を買わなければどこかで雨宿りをするしかありません。「急な雨で身動きできなかった」という言い訳で約束に遅れる事もできます。しかし、このもっともらしい言い訳をする前に、傘への5ドル投資の意味を一度考えてみてください。ひょとしたら傘を買ってでも約束の時間に間に合わせるかもしれません。あなたが5ドルの投資をしないばかりに、先方の貴重な時間を無駄にさせてしまうこともあるのです。
先日、急な雨で傘を買い帰宅、自宅の下で雨宿りをしている方にその傘を差し上げたらとても感謝されて、5ドル以上の幸せな気持ちになりました。まさに傘の“Pay It Forward”(恩送り)です。商売の鉄則は、「人をハッピーにする事」だと考えています。路上で傘売りをするのもビラ配りをするのも、その商品で人をハッピーにできるのであれば堂々と胸をはってすべき仕事なのです。
(次回は8月第4週号掲載)

〈プロフNakagawaィル〉 中川扶二夫(な かがわふじお) 広島県出身。1988年にニューヨークに一人で渡り起業。在ニューヨーク25年。この間にアムネットをはじめ八つの会社(18拠点)を日米で立ち上げる。成功よりも失敗を肥やしに独自の「家族型経営」が世界で通用するかをチャレンジしている。現在、異業種進出を含め、アジア、南米、欧州へ の進出を計画中。

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