〈コラム〉「そうえん」オーナー 山口 政昭「医食同源」

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マクロビオティック(2)

本格的にマクロビオティックを始めたのは「そうえん」に入ってから数カ月後です。飛行機に乗る時も玄米弁当です。機内食にはベジタリアンやビーガンなど、たくさんの種類が用意されていますが、玄米弁当にはかないません。旅先でも私は徹底してマクロビオティックに近い食事をします。世界の都市のどこに、マクロビオティック・レストランやベジタリアン・レストランがあるか頭に入っていて、その一覧表を作って他人に分けてやっていたこともあります。
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マクロビオティックを始めてどう変わったかと、よく訊かれますが、もし実践していなかったらどうなったかというのは、アメリカに来ていなければどうなったかというのと同じで、比較するのは難しく想像するしかありません。アメリカに来ていなければ、たぶん地元に戻って、何か商売をしていただろうし、実際の私よりずっと親孝行をしていただろうと、実現できなかったもう一つの生き方として、後悔というか未練のようなものが、全くないわけではありません。マクロビオティックもそういう意味では、もし実践していなければ学生時代の友達と会食した時でも、彼らと同じものを食べ、飲み、もう少し彼らの仲間に入れてもらえたかもしれません。?しかし、これだけははっきり言えます。精神的にも肉体的にも、今よりずっと不健康だろう、と。どちらが私にとって良かったかは自明です。
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いい例があります。今から何年か前に結婚したばかりの妻にグリーンカードを取らせた時(年齢差のせいで)偽装結婚を疑われたので、私の銀行口座に彼女の名前を加える以外に彼女を受取人とする生命保険に入ることを求められました。その時生命保険会社は当然私の健康診断を行ったのですが、診断結果が良好すぎて(これはなかなか死にそうにないと)掛け金を何割か返してくれたのです。お金を返すことは、「100人に1人いるかいないか」と言われました。―長年、マクロビオティックを続けてきたせいだろうと思います。
(次回は12月10日号掲載)
〈プロフィル〉山口 政昭(やまぐち まさあき) 長崎大学経済学部卒業。「そうえん」オーナー。作家。著書に「時の歩みに錘をつけて」「アメリカの空」など。1971年に渡米。バスボーイ、皿洗いなどをしながら世界80カ国を放浪。

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