賃貸契約におけるセキュリティーデポジットのバーンダウン条項について

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テナントが設定された期間中に要請しないと減額権は放棄されたものと見なされる

賃貸取引の初期交渉をするときや、タームシート(term sheet─契約の大まかな枠組みを項目別にまとめた表)を作成するとき、テナントはセキュリティーデポジット(security deposit─敷金)のバーンダウン(burndown─減額)について見落としがちです。

契約期間の開始時は、テナントの義務と家主のリスクが最大のときです。テナントの財務状況が懸念されたり、テナントが新規設立された企業体であったりする場合は特にそうです。このような状況のとき、家主は新規賃貸取引のリスクの可能性を回避するため、しばしば多額のセキュリティーデポジットを課します。しかし、契約期間が経つにつれ、テナントが賃貸契約下の義務のコンプライアンスを遵守する実績ができてくると、家主のリスクは下がります。

バーンダウン条項は、テナントが賃貸に係る義務を全て履行した場合に限り、テナントが契約開始時に支払ったセキリティーデポジットを、後に減額するというものです。減額は、設定金額を特定の日に減らすか、次期をずらして段階的に設定金額を減らすことができます、

もしセキュリティーデポジットが現金だった場合、バーンダウンはセキュリティーデポジットのテナントへの直接返金になるか、賃貸契約下で発生した費用に充てることもできます。セキュリティーデポジットが信用状(letter of credit─銀行が特定の条件において特定の人物に対する支払いを保証するレター)の場合、バーンダウンには新しい信用状を作成するか、既存の信用状を修正して減額を反映することになります。その場合、恐らく信用状の発行機関に手数料を支払う必要があります。

一般的に、賃貸契約におけるバーンダウン条項は自動的には実行されません。通常、テナントのバーンダウン権が発効した段階で、テナントは家主に対してバーンダウンの要請を行う必要があります。家主からはテナントにバーンダウン権の通知をしないため、自動的にバーンダウンが実行されることはありません。賃貸契約には、バーンダウンの要請期間を設ける条項が含まれていることがあります。その場合、テナントが設定された期間中に要請を行わないと、バーンダウン権は放棄されたものと見なされます。

このように、テナントは賃貸契約のバーンダウン条項に注意を払い、家主に対して適時にバーンダウン要請ができるよう、カレンダーに印を付けておくのが良いでしょう。そうしなければ、テナントは賃貸契約に不必要にお金を縛られるリスクが高まり、そのお金を別の金銭的義務に使う機会を失うことになってしまいます。

(Miki Dixon & Presseau法律事務所、弁護士 マリアン ディクソン)

(次回は9月第1週号掲載)

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(お断り)本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は弁護士・法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。

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