〈コラム〉仕入れコストを見直す コストが大幅に下がることも

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「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第33回

長い間、ビジネスをしていると取引先も固定され、同じものを仕入れることが多く、仕入れコストを真剣に見なくなりがちになります。
先日、ある会社の工場に行き、社長から相談を受けました。世間一般的には繁盛していると見えるのですが、思ったほど利益が出ていないことに驚きました。3年前と比べて売り上げは上がっているのですが、利益がかなり下がっていました。項目別に分析すると仕入れコストが3年で3倍になっていました。仕入れのインボイスを見せてもらったのですが、全ての商品について値上げがされています。仕入れ担当者に聞いたところ、原料や運搬時のガソリン代の上昇で値上げは仕方がないと説明でした。大手のディストリビューターを使って仕入れをしていたので信用していることもありますが、ディストリビューターを1つしか使っていなかったのでマーケットプライスを知ることができない状況でした。そこで競合他社に連絡してアカウントを開けてもらい、同じような商品のプライスを比べてみました。すると、かなり下がることがわかりました。現在のディストリビューターの担当者に問い合わせたところ、最初は言い訳をしていましたが、競合他社の存在を知り、すぐに値段を合わせてきました。
その担当者の内部事情を調査していくうちに、アメリカ系ディストリビューターのセールスマンはその月の成績によってインセンティブが払われるという出来高性の割合が高く、高く売れば売るほど、自分の給与に反映します。よって、こちらが値段を気にしていないことが分かるとセールスマンによっては、物価の上昇に便乗して値段を上げる場合があります。
「原料や運搬時のガソリン代の高騰」というのは本当に起きている現象ですが、この情報に注目させて値上げに誘導していくのは、営業の技です。こういう技法を「アンカリング効果」といいます。船がアンカーを下ろすとそこから動けなくなるように、最初に強い情報を打ち込んでおいて、相手の思考のスタート点を固定してしまうことです。
取引先を信用することは大切ですが、仕入れコストを見ないというのはリスクが高いです。経費の中でも、仕入れコストは大きな割合を含むからです。もし長い間、仕入れコストを見直していないとしても遅すぎませんので、コスト管理を始めてください。見直してみるとコストが大幅に下がるかもしれません。皆様のビジネスの成功を祈ります。
(次回は11月第2週号掲載)
takeshi%20001[1]〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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