〈コラム〉「COACH A」竹内 健 「対話で変える!」第18回

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対話の力(18)〝リクエスト/要望〟(その2:効果的なリクエスト)

こんにちは。COACH Aの竹内です。前号では、目標を達成する原動力となる「リクエスト」についてお話しました。今号では、効果的な「リクエスト」の仕方と注意点をご紹介します。
ある日系企業の社長であるAさんは、アメリカ人部下Bさんと仕事をし始めた時、彼女が自分の部下や周囲へリクエストをする時、ある“パターン”があることに気づきました。
「この報告書、すごくよくできていると思うわ! あとは、まとめの部分の表現をちょっと工夫してほしい」、「ほんとにこの一年、よくがんばってくれたわね。今後はチーム全体の生産性がアップする方法を考えてくれるとうれしいわ」
皆さんは、“パターン”にお気づきでしょうか? Bさんは人にリクエストをする際、必ずよくできているところや行動をまずアクノレッジ(本稿・第4回参照)していたのです。
アクノレッジは、人にやる気や達成感を持たせる効果があります。アクノレッジされた相手は、モチベーションが上がり、話を受け入れやすい状態になります。
一方、Aさんは、気になるところばかりを指摘し、ダメ出しをした上で改善してほしいことを伝えてしまうことが多かったのです。周囲や部下は、当然、前向きな気持ちにはなりにくく、Aさんの“小言”をしぶしぶ聞いていたような状態でした。それに対し、Aさんは、「どうして彼らは、リクエストどおりにきちんとやりきれないのだろう」、「あのふて腐れたような態度はなんだ!」と感じていました。
しかし、Bさんがリクエストする時の“パターン”を知り、Aさんは自らの言い方、伝え方こそ工夫、改善すべきだったと、ようやく気づいたのです。
ある調査によると、優秀な経営者が失敗する最大の要因は、「周囲と健全な関係性を築けなかった」ことだそうです。“Relational Intelligence”と呼ばれたりしますが、真のリーダーシップは、部下や同僚との日常の関係性が構築された環境でこそ発揮できるのだと思います。
今回ご紹介した事例は、最初にポジティブな側面を話し、その後、課題の指摘や要望を伝えるパターンです。これがすべてではありませんが、周囲との関係を築きつつ、状況の改善を図るプロセスとして、皆さんもぜひ試してみてください。
(次回は5月第4週号掲載)

02222coach_a 〈プロフィル〉竹内 健(たけうち たけし)
エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者へのサポートを行う中で、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが発揮されることを痛感し、これまた異例の会計士からの転身をはかり現職。
【ウェブ】www.coacha.com/usa/

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