〈コラム〉埋もれた燃料タンク 

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礒合法律事務所「法律相談室」

今月ニューヨーク州ウエストチェスター地区で民家の裏庭から燃料タンク(heating oil tank)の撤去中にタンクが爆発し作業員が死亡しました。本来この種の燃料タンクに使用・保存される燃料は爆発するものではなく、爆発の原因はタンク内に長期間残留した気化したガソリンにあると言われていますが、なぜ燃料タンク内にガソリンが存在していたかは明らかにされていません。
一昔前は燃料の安さから暖房用に燃料タンクを使用する家が多くありましたが、現在ではアメリカの一般家庭では油ではなくガスによる暖房が大半であり、暖房目的で油を使用する家庭は全米でわずか数パーセントと言われています。通常は敷地内のどこかに埋もれている燃料タンクですが、その存在は不動産物件取引の際に契約交渉が難航する可能性を秘めたアイテムでもあります。現在は使用されていない燃料タンクを撤去する場合、比較的低費用で済みますが、仮に燃料タンクから油が漏れ、地面に浸透している場合、その撤去作業もろもろに数万ドル程掛かる可能性があります。燃料タンクは物件所有者に管理責任があります。このため一軒家の物件購入予定者は不動産売買契約規定内に「売主・所有者は物件内に燃料タンクが存在しない事を保証する。仮に燃料タンクが存在する場合はクロージング(所有権移行)日までに自身の費用で撤去する事を保証する」という契約事項の挿入を提示する事が賢明です。しかし現実的には、売主は自身の所有物件内に燃料タンク及び油の漏れが存在するのか、又過去に存在した事があるか否か、過去の所有者が合法的に燃料タンクを撤去したのか、等の知識がない場合が多いため、燃料タンクの存在事実・撤去に関する保証には抵抗があり、結果的には「no, no, no way」となり、契約交渉は難航し、平行線をたどってしまいます。
燃料タンクに関する契約交渉の難航を回避する効率的な方法の一つは契約交渉が本格化する前に、専門業者を雇い燃料タンクの存在を調査することです。燃料タンクの調査、撤去を行う業者は通常は200ドル前後で特殊装置を使用し敷地内の燃料タンクの存在、漏れを調査します。家に入ることなく調査は完了するため、所有者は調査中に家にいる必要もありません。調査の結果、燃料タンクが存在しない場合、その業者は燃料タンクは存在しないという認証書を発行します。契約時交渉以前にこの調査を行うことにより購入予定者は燃料タンクがしないという事実を知ることができ、契約交渉アイテムに燃料タンクを持ち出す必要もありません。仮に燃料タンクがあるが漏れが見て取れない場合、購入者は1500ドル程の実費により後に燃料タンクを撤去するか、そこまで魅力のある物件ではない場合、早々に購入を諦める事も可能です。仮に燃料タンク及び油の漏れがある場合、所有者は全額自己負担で燃料タンクと漏れの処理を行うか、物件売却額から掛かる費用を調整し現状渡しとすべきですが、その一切を拒む場合、購入者は即座にその物件から立ち去る事が賢明と言えます。燃料タンクの漏れが存在する限りその物件の売却の可能性はことごとく低くなります。
(弁護士 礒合俊典)
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(次回は6月第3週号掲載)

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