〈コラム〉中島敏行「言葉のチカラ」第5回

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お客様を思う気持ち「真心」が共通認識

 念願のアメリカでの就職が叶いました。ニューヨークに根を下ろし、「やきとりイースト」で新生活を送り、店のスタッフや上司にも恵まれ、とても充実していました。
 1年が過ぎた頃、同店を経営するイーストグループの若山和夫社長からニュージャージーの「肥後ばってんラーメン」を任せるとの辞令が出ました。
 ラーメンですか…? ラーメンの仕事は僕にとって全く未知の領域であり、ラーメン自体作ったことも提供したことすらないため、正直すぐに答えが出せず、驚きと不安ばかりが交錯しました。しかし、これも自分にとっての挑戦とチャンスと受け止め、引き受ける決心をしました。
 やきとりイーストから肥後ばってんラーメンに異動し、まずは先任からラーメンの作り方を引き継ぎ、店の問題やスタッフからの声を聞きながら自分にできることは何かを探りました。
 また、時期を同じくして近くの日系スーパーにあるフードコートがリニューアルオープンし、売り上げは激減。同業者からは新参者に対するヤッカミを受けたりと、たちまちピンチに立たされました。
 しかし、スタッフの意識が想像していたよりも高かったことで、店舗全体の問題に直視し、内部要因を徹底して話し合いました。
 当時の僕にはラーメンの知識も技術もなかったため、“何をするか”よりも“この地域にとってどうあるべきか”を考え、その結果、肥後ばってんラーメンのテーマ「真心」が生まれたのです。
 このテーマを軸として共通の認識を持ち、「今日来てくださったお客様に元気になっていただこう」というコンセプト、合言葉の下、スタッフ一丸となって新生・肥後ばってんラーメンをスタートさせました。
 そして自分自身にも合言葉をつくり、その言葉を毎日復唱しています。
 「順境に楽観せず逆境に悲観せず、常にハングリー精神を持って事に臨むべし」。店を任せていただいた以上は、環境や感情に左右されることなく組織の舵をとる上で大切な言葉と実感しています。
 こうして地道に店舗を運営し、2010年、独立のチャンスをいただきました。
 着任早々スタッフ皆で考えたお客様を思う気持ち「真心」―。初心を忘れない意味も込めて、社名を「MAGOKORO Inc.」としました。そして、今なお邁進しております。

batten_nakajima〈profile〉 中島敏行(なかじま としゆき) 肥後ばってんラーメン オーナー、Magokoro Inc.社長。千葉県出身。経営マネージメントを学び、1996年ワタミ・フードサービス(株)(現WATAMI)に入社。創業者である渡邊美樹氏(現会長)から直接指導を受け、居食屋和民の店長、スーパーバイザーを経て03年W&E Hospitality Inc.へ転職のため渡米。05年に肥後ばってんラーメン店長に着任、10年独立。

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