〈コラム〉時代の流れと法則 新しい発想持ち、競争がない分野の開拓を

0

「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第17回

皆さんはパレートの法則というものが聞いたことがあるでしょうか。物事はある一部分が全体に大きく影響しているという法則です。例えば、商品売り上げの80%は20%の商品銘柄によって生み出されていたり、所得税全体金額の8割を払っているのは、課税対象者の2割であったりするところからの経験則ともいえます。
私は大学でこれを習った時に、本当にそうなるのかなと疑っていましたが、実際に商社に勤め、商品を分析してみると本当に近い数字になりました。しかも、商品だけにとどまらず、売り上げ全体の80%を作っているのは顧客全体の20%であったり、 売り上げ全体の80%を作っているのは全セールスマンの20%だったり、不思議にその数値は近いものでした。商品売上高を縦軸、商品銘柄を横軸にして売上が高い順に左側から並べると左上から急降下し、低く右側に伸びていく曲線になります。低く伸びている部分が80%のあまり売れていない商品を指すのですが、尻尾に見えるところから「ロングテール」と呼ばれるようです。
それでは、この法則を使ってどのように商品戦略を練ればよいかということですが、いかがでしょうか。先の例を逆に言うとロングテールの商品は20%の 売り上げしか作っていないということになりますので、新しい商品に置き換えることが、どのビジネスにおいてもよいことでしょうか。商品を店頭に並べたり、在庫保管場所に限りがあるようなビジネスなどはその考え方がよいかもしれません。20年前に大学でそう習った気がします。ただ、時代と共にITの発達により、20年前とは違うビジネス形態も確立され、答えは一つではなくなってきています。オンラインビジネスの登場で店舗を持たず、在庫も最小限に抑えられ、物流コストが極端に小さくなった結果、年に少量しか売れないロングテール部分の商品も市場に残るようになりました。昔からの法則は変わりませんが、その使用方法は時代の流れによって変化しているように思います。競争相手が多い市場を血の色に例えて「レッドオーシャン」と呼び、競争がない市場を「ブルーオーシャン」と呼んだりもするそうですが、任天堂のWiiがそれまでのゲーム業界の高性能化競争から離れ、ゲーム慣れしていない人をターゲットにして、成功した事例があります。時代の流れや消費者のニーズをよく研究して新しい発想を持ち、比較的競争がない分野を開拓して成功できれば、新しいビジネスモデルに繋がるかもしれません。
(次回は7月13日号掲載)

(「WEEKLY Biz」2013年6月8日号掲載)
takeshi%20001[1]〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
過去の一覧

Share.