〈コラム〉Dr. Clara Lee「歯のおはなし」20回

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I Don’t Want to Take Anymore X-rays!

レントゲンは、もう撮られたくない

最近「歯科レントゲン検査が脳腫瘍のリスクを高める」との研究結果が報道されました。これを知った多くの方が「なぜ歯科医はレントゲンを撮りたがるのか?」と疑問に思ってらっしゃるかもしれません。今回はその疑問にお答えしたいと思います。
◇  ◇  ◇
まずお伝えしたいのは、この報道では現在の歯科レントゲン撮影は以前よりも被ばく量が軽減されていると述べられていること。また、調査対象の髄膜腫患者には聞き取り調査での確認だったことなどから、リコールバイアス(患者の記憶による偏り)が否定できないとしていることです。
レントゲン撮影は視診では分からない虫歯の大きさ、歯間の虫歯、歯周病による骨吸収、歯根の病巣などの診断に大きく役立ちます。急症状以外の撮影頻度は、患者さん個人の口腔(こうくう)状態、年齢、リスク要因(虫歯、歯周病になりやすい)によって異なります。言うまでもなくレントゲンは必要があると思われる時に撮るのです。
ところで皆さんは、日常生活を送りながら被ばくしていることを知っていますか? 自然に浴びる放射線は日本では年間平均約1・5ミリシーベルトと言われています。ちなみにブラジルのガラパリ市街地では10ミリシーベルトの自然放射線が観測されるそうですが、住民の健康問題はないそうです。医療法に定められた全身の年間最大許容被ばく量は50ミリシーベルトで、人が自然界から1年間に受ける放射線は1000枚のデジタルX線と同等レベルといわれています。しかもレントゲン撮影時には患者さんの体は鉛の防護エプロンで守ります。
レントゲン撮影は口腔内状況を明確するだけでなく、以前に撮ったレントゲン写真と比較することで症状の変化を知ることができます。歯科医はレントゲン写真から得られる情報を患者さんに詳しく説明し、治療方針を打ち出します。
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皆さんにお伝えしたいのは
” Don’t Panic, Don’t Stop Seeing The Dentist! ” です。レントゲン撮影では必要性を歯科医に充分確認して受診していただきたいと思います。 (次回は6月9日号掲載)(「WEEKLY Biz」2012年5月12日号掲載)
〈プロフィル〉Dr. Clara Lee ニューヨーク大学歯学部卒業。ニューヨーク大学ブルックデール病院でチーフレジデンス修了。13年以上に及ぶ臨床経験は一般歯科、コスメティック、インプラントを含む。インビザライン認定医。Waterside Dental Care院長として古山医師と共に、多くの日本人患者さんを治療。Dentistryをこよなく愛している。記事提供:Waterside dental Care(Tel:212-683-6260)

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