AUTEC、ブルックリンにショールーム

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〝寿司ロボット〟のパイオニア

 

オープニングパーティーで、売り上げ1位の「ASM865A 巻きメーカー」の前で撮影に応じる(左から)AUTEC Inc. の近藤翔太氏と田中上千CEO夫妻=6月29日、ニューヨーク

オープニングパーティーで、売り上げ1位の「ASM865A 巻きメーカー」の前で撮影に応じる(左から)AUTEC Inc. の近藤翔太氏と田中上千CEO夫妻=6月29日、ニューヨーク

北米で〝寿司(すし)ロボット〟を製作、販売している「AUTEC Inc.(オーテック)」(カリフォルニア州トーランス)が6月29日、 ニューヨーク・ブルックリンのサンセットパーク地区、インダストリー・シティーにショールームをオープンし、記念パーティーを行った。和食や食文化関係者ほか、さまざまな業界関係者らと多くのメディアも含め、100人ほどが来場、にぎやかに執り行われた。

CAからNYに進出

ニューヨークに進出してくるのが夢だったという同社社長兼最高経営責任者(CEO)の田中上千(たなか・たかゆき)氏。今後、「日本人の職人さんたちの助けが必要になってくると思いますが、寿司のレベルを上げていきたい。そして、(私たちの技術で)日本食文化の繁栄に貢献していきたい」と今後の意気込みを語った。

こちらのショールームでは、寿司メーカー、シャリメーカー、海苔(のり)巻きメーカーなど、業務用の食品加工機器が展示、販売されており、同社が誇る製品を実際に見て、使用感を確かめられるようになっている。

社運を掛けた挑戦寿司ロボット

オープニングパーティーでのデモンストレーション=同

オープニングパーティーでのデモンストレーション=同

同社の社名ロゴには、テレビやラジオ、音楽CD制作のスタジオなどで愛用されファンも多いハイエンドの、日本の音響機器メーカー「オーディオテクニカ(audio-technica)」と同じAのマークが入っている。

聞けば、レコード文化が低迷し始めた1980年代初頭、オーディオテクニカが新事業の社内コンテストを実施し、レコード盤を正確に回転させる技術を応用した“寿司ロボット”のアイデアが登場したのだとか。

奇抜な、しかし“スシ文化”が米国を中心に広がりつつあり、既に米国に日本食レストランが1万件以上存在していた当時の流れを見事に読み、2000年に米国進出。オーディオテクニカは「オーテック」という商標で食品加工機器メーカーとしての道も歩み始めた。社運を掛けた挑戦がスタートし、今では、米国で“寿司ロボット”といえば“オーテック”と言われる存在となった。

巻き寿司とシャリ作り改良をかさね誕生

売り上げナンバーワンの機械は「ASM865A マキメーカー」。名前の通り、巻き寿司専用の機械で海苔の上にシャリを載せたライスシートを1時間に1400枚製造できる。寿司といえば握りでは? と日本人は感じるが「そこが最初の大きな学びでした。米国では“スシ”と言えば、巻き寿司が主流。でも、日本ではどちらかというと二番手以降の存在ですから、巻き寿司専門で、高い品質で大量に作っていける職人さんが欲しいと思っても、日本には存在しないわけです」

米国内のあちこちを飛び回り、レストランや工場でヒアリングと調査を続けた。調べれば調べるほど違いが出てくる。米の品質、砂糖を入れる分量、そもそも米国の保健条例では木製の寿司桶(おけ)を使用できないので、酢飯が上手に作れない…。これら全てがロボットの開発、改良、そして新製品発表の原動力となった。ご飯と酢をふんわり混ぜ、いらない水分と酢を程よく飛ばせる機能を持った売れ筋2番手の「ASM780Aシャリメーカー」もこのような経緯で誕生した。

米国進出で機械の質がより向上

09年にオーディオテクニカから独立してからさらに機械のクオリティーが上がった、と田中社長は話す。現場に出向き、業務でのフォローアップを徹底的に調査することが可能になったからだ。売り上げ1位の「ASM865A マキメーカー」は、海苔の上にシャリをふわっと均一に置くところまでで「巻く」作業は手で行う。巻く作業は高い技術力がなくとも誰でもすぐにでき、シャリを置くことのほうが難しいからだ。某大手スーパーでは一日に2000パッケージの巻き寿司が売れる時代。大量に生産するためには実はこの方法が最も効率が良いという。

また、レストランはテークアウトなど注文数が多いため、生産効率の高い「ASM865A マキメーカー」がよく使われているという。大学や大企業の社員食堂などの現場では、巻く作業までを完結してくれるタイプ「ASM880A」がコスト削減や効率化に貢献している。

「ASM410A 寿司メーカー」

「ASM410A 寿司メーカー」

同社の機械は衛生的で壊れづらく、万が一壊れた場合にも、壊れた箇所が簡単に分かる設計なので修理が簡単。システムアップデートはUSBメモリーででき、導入した機械を長く愛用することができる。どこまでも現場主義を貫くのは、足で調査し、現場がどれだけ忙しいかを肌で感じているからだ。

“スシ文化”が米国に登場してから長い時がたち「消費者の舌も肥えてきましたし、美しいデザインのスシメーカーを見える場所に置きたい、という要望も。いよいよ日本人のこだわりの見せ所です」と語る田中社長。新ショールームがニューヨークの寿司文化をどれだけ刺激してくれるか、期待したい。

 

オーテック・ショールーム
AUTEC Showroom
【場所】253 36th St Suite C303, Brooklyn, NY 11232
【営業】月―金午前10時~午後6時
【電話】917-979-0633
【Eメール】sales@autecusa.com
【ウェブ】sushimachines.com/

(2017年7月8日号掲載)

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