〈リアル〉File 14 音楽家・宮島律子さん

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自分の気持ちがアーティストにもファンにも伝わる幸せ

〜松田聖子、AKB48グループ、森口博子、長山洋子らに楽曲提供〜

0712-21men-L-miyajima 私たちの生活に彩りを添えてくれる音楽…。何気なく耳にし、親しんでいる音楽を創作し続けているプロがいる。宮島律子さんは、松田聖子、AKB48グループ、森口博子、長山洋子らに楽曲を提供し続ける音楽家だ。

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 音楽活動のスタートはシンガーから。デュオグループ「MILK」でレコードデビューし、バックコーラスとしても数多くのアーティストのツアーや公演に参加した。作詞作曲の能力を生かし、同時期に平行して作家の事務所にも所属したことから、多様な音楽活動が始まる。河合奈保子、少年隊、西城秀樹などのコンサートに参加する中で、さまざまな楽曲に触れ、演奏してきた。「聴くだけでなく、歌いながら伝えながら活動してきたものが、今の音楽活動を支えているのだと思います」

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 音楽活動歴は26年。数々の著名アーティストに作曲家として楽曲を提供し、必要があれば作詞も手掛けてきた。楽曲を作る際は、まずはアーティストの歌声を聞く。低い音が魅力的なのか、高い音か、それとも中音域なのか。そこにバラード・ダンス系など曲調の要望を加え、方向を絞り込んでいく。制約はあればあるほど逆に楽で、ゲーム音楽でも、演歌でも、格闘技のテーマ曲でも、依頼があったものをジャンルを越えてどんどん書いていく。

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宮島さんが作曲を手掛けた、AKB48初の演歌歌手・岩佐美咲のソロシングル「鞆の浦慕情」は、発売週にオリコン1位を獲得。演歌ソロ歌手の総合1位は4年5カ月ぶり。10代の演歌歌手としては27年7カ月ぶりの快挙だった

ただ、書いた楽曲が全て採用されるとは限らないのがこの業界。「コンペティション」があるためだ。一人の作曲家に依頼するのではなく、一つ新しい楽曲が欲しい時に、何人もの作曲家に依頼してコンペに掛け、採用された曲のみが、世に出る。常にコンペに応募し、落ちたり受かったりを繰り返すので「受かったらもちろんうれしいのですが、落ちても悩んでいる暇がないんです」。ことしの3月は最大のコンペ数で、1カ月で18のアーティストのコンペに楽曲を送った。一日に1曲は書き上げないと間に合わない計算だ。そんなハードワークをこなしても、落ちた場合、報酬は0円。採用された場合も、販売された枚数によって収入金額が変わる厳しい世界で「最近、成功とはなんぞや、とよく考えるんです。1位になったからなんなのかな、と思うことも当然ありますが、ファンの声がインターネット交流サイト(SNS)などを通じて伝わってくると、力をもらえます」と話す。
ある時、AKB48の人気メンバーで「たかみな」の愛称で慕われる高橋みなみが、「宮島律子さんの曲が大好きなんですよ!」とマイク越しに語る映像を見た。「鳥肌が立ちました。自分が書いた作品と丁寧に向き合い、作品との出合いを味わってくれていることを感じられる瞬間のうれしさは、言葉には尽くしがたいです」

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 内田有紀に提供した楽曲「お世話になりました」も心に残る1曲。依頼が来た際、なぜか頭に井上順の「お世話になりました」のイメージが浮かんで、「わずか2分ほどで書き上げたんです。仮の詞も同時に浮かんで来て、全てを一気に。その時、書き上がった! と思った瞬間になぜかどっと涙が出てきたんですよ」。その曲はプロデューサーの武部聡志さんにも「最高の曲」と認められ、アーティストの種ともこが歌詞を提供。レコーディングでは、「内田有紀本人もこの曲が何より好きだと言っていた」という秘話が宮島さんに届く。後日、渋谷公会堂でのコンサートを観に出かけた宮島さんの目に入ってきたのは、ぼろぼろと涙を流しながら歌う内田有紀の姿。また会場には、大きな声で同楽曲を一緒に歌う一人の女の子の姿があった。歌詞カードも見ずに、最初から最後まで一緒に大声で歌う女の子…。「それを見た時、ああ、この幸せは世界で私一人しか感じられないんだ。ご本人に、私の気持ちが伝わって、ファンの方にも伝わって…。有名か有名じゃないか、とかじゃなく、こういうことなんだ、って思ったんです」

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 年に何度かスランプが訪れて、全く書けなくなることがある。そんな時に訪れる街が実はニューヨークだ。「行って帰ってくるだけで、なぜかどんどん書けてしまう…。行くだけで刺激がある街で、世界で一番好きな街です」。ニューヨークで活躍する日本人には「ありがとうと言いたい」と宮島さん。「とんでもない労力をかけて、苦労を背負いながら日々すごしている方々…。背中を押されますし、本当に頑張ってほしいと思うんです。本当に心から、ありがとうと言いたいです」

秋元康さんに憧れ、学生の時からその著書を読みあさり、特に『君がニューヨークを選んだ理由』は今でも手元にある愛読書。学生時代、同書を読みながら「いつか日本を、世界を揺るがすようなアイドルに楽曲を提供できたら…と思っていたのですが、それが少しはかなってきたかな、と思うんです」と笑顔を見せた。
(「WEEKLY Biz」(ニューヨーク)2014年7月12日号掲載)

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