〈コラム〉中川扶二夫 「逃げない、がKeyword」第30回

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せめてローリスクな人生を

 

中川扶二夫

ニューヨークの9月には「9・11」忘れてはいけない日があります。
14年前のこの日から、世界中で本格的にテロとの戦いが始まったといっても過言ではありません。

日本国内だけで暮らしているとテロはそれほど身近ではありませんが、出張でアメリカやヨーロッパに行ったり、遺跡のある国を観光で訪れたりすると、テロとの戦いに命をかけて治安を維持してくれる人がいる事を痛感するものです。欧米諸国では、テロのみならず、日常生活で毎日使う電車でさえ誰かが命をかけて治安維持に全力を注いでいます。

例えば欧米の一般市民が毎日利用する電車の中、周囲が身の危険にさらされる犯罪行為が起きたとします。もし襲われる人を助けようとすれば、自分も報復される可能性が高まり、とても危険です。正直私も自分自身の危険のリスクが高くて助ける事ができないかもしれません。これはあまりにハイリスクです。それでは車内の全員が団結するとなればどうでしょう。複数で戦えば危険を回避できる可能性も期待できローリスクとなります。また、さっさと退散して逃げるという選択もあります。いかなる時も自分は傷つかず、とにかく全て他人任せにすれば、ノーリスクです。ハイリスクで英雄が生まれ、ローリスクでは感謝が生まれますが、ノーリスクは無でそこからは誰も何も生まれません。そんなノーリスクの人生に明るい未来はあるのでしょうか。

もちろん住む国や人種、さまざまな環境においてできることとできないことがあります。
例えば、今ヨーロッパで起こっている難民問題。EUだけがハイリスクで解決する問題ではなく、世界の国々ができる事を協力しあい、ローリスクで一番いい結果を目指すべきだと私は思うのです。

誰もが一度きりの人生、できればノーリスクがありがたいことです。でもノーリスク=ノーリターン。それでは何も生まれないのです。せめてローリスクな人生を。日々の生活の中で、自分は何ができるかを考え、皆それぞれができることを行い、少しでも幸せな人が増えればいいですね。
(次回は10月第4週号掲載)

中川扶二夫

【執筆者】なかがわ・ふじお 広島県出身。1988年にニューヨークに一人で渡り起業。在ニューヨーク25年。この間にアムネットをはじめ八つの会社(18拠点)を日米で立ち上げる。成功よりも失敗を肥やしに独自の「家族型経営」が世界で通用するかをチャレンジしている。現在、異業種進出を含め、アジア、南米、欧州への進出を計画中。

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