〈コラム〉「そうえん」オーナー 山口 政昭「医食同源」

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マクロビオティック・レストラン(39)

子供のときから私は死の恐怖に怯えていました。死んだら意識がなくなる。――意識のない世界は、ものすごく恐ろしいところのように思えました。
身体の痛みにも敏感になります。心臓付近の痛みは小学生のころからありました。激しく痛むわけではないし、ほんの数秒つづくだけですが場所が場所だけに不安になるのです。
高校に入ってまもなく、クラスメートが肉腫で片足を切り落したときは私の足まで痛くなりました。自分も同じ病気かもしれないと恐れて近所の医者に行ったら、若年性リューマチかもしれないと言われた。ためしに心臓も診てもらったら、雑音は聞こえないが血圧が百八十もあるので、若年性高血圧症だろうと血圧降下剤をもらいました。― ―心配しすぎて血圧まで上昇していたです。
心臓の痛みは高校一年のとき学校の図書館で調べたら「心臓神経症」という項目にぶち当たった。胸の中央付近が痛む病は「狭心症」のようにいくつかあるが心臓付近が痛む病は、私のように若く、また心臓から雑音も聞こえなければ「心臓神経症」の疑いが濃い、と。これだ! うれしくて、その記事を書いた医者にどんなに感謝したかしれません。それからは多少痛んでも書物に書いてあったように「気にしない」ようにしていたら、ほとんど気にならないくらいに治っていました。「病は気から」というのは私の場合、絶対ほんとうです。
リューマチかもしれないと言われていた足の痛みも「気にしない」ようにしていたら、いつのまにか治っていました。中学生のころ耳たぶにしこりがあるのも長い間、気になっていた。悪い病気ではないかと恐れ、一日に数回、指で触っていた。何度も触るから大きくなり、かかりつけの耳鼻科の医師に見せたら、イアリングをつけているみたいだと笑われたが逆に、それで心配することはないらしいと気がラクになったのを憶えています。
(次回は12月第2週号掲載)
〈プロフィル〉山口 政昭(やまぐち まさあき) 長崎大学経済学部卒業。「そうえん」オーナー。作家。著書に「時の歩みに錘をつけて」「アメリカの空」など。1971年に渡米。バスボーイ、皿洗いなどをしながら世界80カ国を放浪。

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