〈コラム〉妊娠中でもLet’s エクササイズ! 早産のリスクなく、帝王切開も回避

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日本クリニック「医療の時間」第33診

運動は誰にでも良いものですが、妊娠中ということでついつい安静にしすぎていませんか?
長年されてきた研究によると有酸素運動は心肺を強くし、病気のリスクを下げてくれます。米国スポーツ医学学会と米疾病対策センター(CDC)によると、健康のためには、毎日最低30分の適度な運動をすることを推奨しています。2002年には米国産婦人科医学学会でも健康的な妊婦にも同じだけの運動をすることを推奨しています。これは、運動から得られる効果が副次的要素をかなり上回っているという、多くの研究結果に基づいています。
では、なぜ妊婦のたった16%(疫学の研究結果による)しかこの推奨を実行していないのでしょう? 多分、まだ大勢の妊婦や産婦人科医が妊娠中の運動に以下のような疑問を持っているからでしょう。
・運動は早期陣痛や早産を引き起こす?
・運動は妊娠中の体の痛みを増大させる?
・普段運動しない女性も妊娠は習慣的な運動を始めるべき?
・運動は陣痛や出産や産後回復に良い効果をもたらす?
◇ ◇ ◇
先月、月刊医療ジャーナル「Medicine & Science in Sports & Exercise」による研究結果が発表されました。これは最低6カ月間、運動を継続的に行った妊婦と、全く行わなかった妊婦をモニターしたものです。
〈研究の流れ〉
まず妊娠12週の女性を二つのグループに分ける
グループ1:昇降運動などの有酸素運動、軽めのウエートトレーニング、速い速度でのウオーキングなどを一日1時間、週に4日行うという指示を出したグループ→指示通りの運動をそれぞれが最低妊娠36週(通常妊娠期間は40週)までは行った。
グループ2:特に運動の指示のないグループ→全く運動をしなかった。
〈結果〉
・グループ1で早産は皆無。
・グループ1の女性はスタミナを向上させ、筋肉や骨の痛みや柔軟性の欠落などは起こらなかった。
・グループ1とグループ2の間で、妊娠期間や新生児の体重、アプガー指数(出産時の新生児の健康状態を表す指数)に違いは特に無かった。
・グループ1では帝王切開率が6%と低かったのに対して、グループ2では32%だった。
・グループ1では産後の回復も著しく早かった。
この研究結果から分かるように、以前は運動しなかった女性も、運動は明らかに体を強くする一方で、筋肉や骨の痛みも起こしませんし、早産のリスクも増大させないのです。妊婦は運動する以前と同じ体重の新生児を健康に出産し、産後回復も早まるでしょう。そして何より帝王切開によるリスクを低下させます。現在、多くの産院では30%から50%の比率で帝王切開が行われていますが、母体に負担が大きく、産後の回復も自然分娩に比べると遅いです。運動によってこうしたリスクを避けることが可能なのです。
◇ ◇ ◇
妊娠中の方も、そうでない方も、運動はメリットになります。皆さん、健康的で楽しい妊娠、産後ライフを送るためにもレッツエクササイズ!!

※流産の可能性のある方や、妊娠中の運動に何か不安がある方は医師に相談してから行ってください。 (次回は2月23日号掲載)

drvitale〈今回の執筆者〉ケン・ヴィターレ医師/Kenneth C. Vitale, MD
日本クリニック/15W 44th St. 10FL. NY,NY 10036
スポーツ医学、理学医療科、リハビリテーション科。

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