代理出産の歴史(25)コロナ禍が引き起こしたロシア代理出産大問題(2)─ロシアは外国人代理出産依頼禁止へ─

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「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第102回

医療コンサルタントである弊社にいただくお問い合わせ件数でトップ5に入る代理出産について説明しています。2013年から、外国人依頼の商業代理出産に対しインド、タイ、メキシコと禁止する規制は続き、世界中で商業代理出産の取り締まりが強化されたこと、そして、代理出産への批判が表面化している中、合法ではあるものの高額である米国を避ける依頼者が、数少ない商業代理出産が合法であるジョージア、ウクライナ、そしてロシアに集中し始めたところでコロナ禍が勃発、代理母から誕生した赤ちゃんを依頼者が迎えに行けない状況を作り出したことを説明してきています。そして、ロシアで大問題が起き、ロシア政府が厳重な取り締まりに動きだしたことを前回=4月3日号掲載=にお伝えしました。

現在、21年の春、ロシア議会は、外国人が代理出産を依頼することを禁止する法律を設定するように動き出しています。ロシア連邦下院の女性副議長であるイリーナ・ヤロバヤ(Irina Yarovaya)は「ロシアはインキュベーターではない」と声を大にしています。

ロシアにおける商業代理出産に対する取り締まりのきっかけは19年12月に起こりました。フィリピンからの依頼人により代理出産から出生した男の子の新生児が、脳の手術後の回復中にモスクワ郊外の乳母が世話をしていた賃貸アパートにて死亡したのです。この時点で、依頼人である法的親権者のフィリピン家族は、この赤ちゃんをフィリピンに連れて戻るための書類等の承認を進めている過程でした。警察は同アパートで、この死亡した赤ちゃんと一緒に、フィリピンからの依頼の3人の赤ちゃんが同居し、看護されているのを発見しました。この3人のうちの双子は、フィリピンの国会議員であるフレデニル・ヘルネス・カストロ(Fredenil Hernaez Castro)による代理出産依頼の生後3カ月の赤ちゃんが含まれていました。ここでロシア警察は人身売買の犯罪に違いない、と容疑をかけ、このニュースは世界中に流れることになります。

(次回は6月第1週号掲載)

さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子【執筆者】清水直子しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。

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