様変わりしつつある日本の大学入試

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増える総合型選抜(AO入試)と受験対策

「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人

日本の大学入試受験生は、大学入学共通テストが終わり、私立大入試や国公立大二次試験を迎え撃つため、最後のひと踏ん張りをしています。大学入学共通テストは、国公立大学志望者は国語・数学・地理歴史・公民・理科・外国語の6教科の受験が必要です。また、私立大や国公立大二次試験は、文系では国語・外国語と地理歴史・公民または数学、理系では数学・理科・外国語を受験しなければなりません。一方、帰国生大学入試の受験生は、私立大入試や年内に入試を実施する国公立大入試が終わったため、2月に入試を実施する国公立大を目指さない場合には、すでに入学先が決まり4月の入学を迎えるのみとなっています。また、国公立大学志望者も大学入学共通テストは免除され、国公立大も私立大も文系は小論文のみ(外国語を課す場合もあり)、理系は数学と理科のみ(小論文や外国語を課す場合もあり)と入試科目の負担も軽くなっています。

しかし、日本の大学入試は、近年では様変わりしつつあり、先述したような一般型選抜(一般入試)とは異なる総合型選抜という入試方法が増加しています。2023年度入試で総合型選抜を実施する国公立大学は104大学で全体の58.4%を占めます。4年前の2019年度入試では総合型選抜を実施した89大学で全体の51.7%でした。また、入学者数に目を向けると、2019年度入試では国公私立大学合計で61,127人(全体の9.9%)だったのが、2021年度入試では77,921人(全体の12.7%)に増加しています。総合型選抜を実施する大学・学部や、総合型選抜での入学者数は、今後ますます増加すると思われますので、現地校卒業前に帰国して日本の高校に入学し、大学入試をする場合には、総合型選抜も視野に入れて準備をするとよろしいでしょう。

総合選抜型入試は、AO入試と呼ばれているもので、アメリカの大学の入試方法を参考にしています。AOはアドミッション・オフィスの頭文字をとった略称で、書類選考を重視しています。総合選抜型について、文部科学省の大学入学者選抜関連基礎資料集には次のように説明されています。

詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせることによって、入学志願者の能力・適性や学習に対する意欲、目的意識等を総合的に評価・判定する入試方法。
(1)入学志願者本人が記載する活動報告書、大学入学希望理由書及び学修計画書等を積極的に活用。
(2)入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価・判定する。なお、高度な専門知識等が必要な職業分野に求められる人材養成を目的とする学部・学科等における選抜では、当該職業分野を目指すことに関する入学志願者の意欲・適性等を特に重視した評価・判定に留意。
(3)小論文等、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績等または大学入学共通テストのうち少なくともいずれか一つを必ず活用。

また、出願期間は9月1日~、結果発表は11月1日~、学力検査を課す場合の試験期日は2月1日~3月25日と定められています。一般型選抜と比べ、出願期間や結果発表が早く、学校推薦型選抜(推薦入試)のように早期に入学先が決められます。

総合型選抜入試の受験対策として大切なことは、受験する大学・学部のことを十分に理解し、大学で何を学び、それを活かして将来どのように活躍したいのかという志望理由を明確にすること、また、それに向けて高校時代にどのような活動をしていたか報告することや自分が受験する大学・学部にふさわしい実力や適性を持っていることをアピールすることなどです。加えて、小論文の作成やプレゼンテーションなどの練習や学力試験が課されることもあるので、その受験対策も必要です。

(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校)

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

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