〈コラム〉スポーツヘルニアの新たな治療法 副腎皮質ステロイド注射が効果

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日本クリニック「医療の時間」第27診

皆さんスポーツヘルニアをご存知でしょうか? スポーツマンヘルニアとして知られる鼠頚(そけい)部痛症候群(別名:恥骨結合炎)は筋肉や腹壁下部の弱化により消耗性の痛みと不快感を鼠径部(股間)に起こします、プロ、アマチュア問わずスポーツ選手なら誰でも起こりうるケガです。
例えばホッケー、スケート、サッカー、テニスなどのスポーツでは、前進しながら体をひねったり、回転させたりすることが必要で、結果としてこの反復的な動作はスポーツヘルニアの原因となることがあります。今まで推奨されてきた治療法は手術でした。しかし、術後はリハビリに約8週間かかり、スポーツ選手はその間、トレーニングができない状況になってしまいます。
しかし朗報です。最近の研究で分かった新たな治療法をご紹介したいと思います。
米国スポーツ医学学会の研究によると、超音波画像診断のもと、副腎皮質ステロイド注射での治療は手術とは対照的に回復時間を短縮させる、とても発展性のある治療法だと発表されています。
研究内容は、12人のスポーツヘルニアを経験した患者(平均31歳)に的を絞って、鼠径部の痛みを超音波検査したところ、全ての患者が腹部や臀部(でんぶ)の挿入部位になんらかの損傷や分裂があることが明らかになりました。そこで超音波画像診断をもとに、全ての患者に副腎皮質ステロイドと麻酔の混合剤を注射しました。その後、患者に対し、この治療法の効果を評価するため、痛みの回復と運動能力の検査(WOMACアンケート)を行ったところ、全体的評価の平均指数は90・9点(100点満点中)でした。こうした研究結果から、この新しい治療法が効果があり、回復がとても早く、スポーツ選手にとって非常に有効であることが分かりました。(参照:米国スポーツ医学大学の研究報告)
(次回は7月16日号掲載)

drvitale〈今回の執筆者〉ケン・ヴィターレ医師/Kenneth C. Vitale, MD
日本クリニック/15W 44th St. 10FL. NY,NY 10036
スポーツ医学、理学医療科、リハビリテーション科。

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