〈コラム〉ケン青木の新・男は外見 第113回

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“スーツ”について その14

毎度ながら「服のことで、よくそんなに書くことあるね」と聞かれますが、紳士服の話に終わりはありません(笑)。アダムとイブ以来、人間の歴史の長さと同じに紳士服の歴史はあり、その歴史は日々延び続けているのですから(笑)。そう思われること自体、紳士服を軽く見ている証拠で、それはご自身を軽く見ているということに他ならず、世界で日本男子の男っぷりプレゼンのマズさの原因は私たちの内にあるのです。一流店には一流店の“包装”があり、紳士服も同じです。欧米においては確かに上流の服飾様式と言え、誰もが着てはいません。でも私たち日本人だからこそ、より多くが西洋の本質を理解し、さらに日本の伝統文化の香りさえ纏(まと)いながら、日本男子のプレゼンテーションを着こなしを通じて世界にアピール出来ると私は考えています。

と硬い話はこのくらいで(笑)、スラックスの“立体”についてあと少し触れておきたく。一つはシルエットはお尻にありと。黒人男性のスラックススタイルは迫力があり、シルエットがとても立体的です。理由はお尻にあります。私たちのは概してフラット、平尻ですが、筋トレで多少の肉体改造もよし、また小細工ですが、左右の尻ポケットにハンカチを2枚ずつくらい入れるという手も。男性もヒップの魅力を見直すべきだと。お尻が張っていると、後身頃が深くないと背中が出てしまいます。黒人男性には日本の既製品スラックスは後身頃が浅すぎてお尻をカバーできません。もう一つはクロッチ、股の部分。これこそ立体のお話ですが、男子用のスラックスは、男性にあって女性にないものを左側に納めていただくように作られてます。以前書きました、生地のクセ付けによる立体化作業によるのですが、日本のテーラー用語でなんと“金ぐせ”と言います!!! 女性用スラックスにはこれはされてませんので、いくらジェンダーフリー、LGBTとは言いましても、女性用に仕立てられたスラックスを男性が身に着けることはお勧めできかねます(苦笑)。それではまた。 (次回は8月13日号掲載)


32523_120089421361491_100000813015286_106219_7322351_n〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。

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