集夢計画25「春若不耕、秋無収穫」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第30回

高さ3.5メートル、横5メートルの掲示板の展示風景。台湾高雄市文化祭の様子はFacebook:Shih Pao Linに掲載

高さ3.5メートル、横5メートルの掲示板の展示風景。台湾高雄市文化祭の様子はFacebook:Shih Pao Linに掲載

台湾の高雄市文化祭で、伝書鳩に夢を託して飛ばした様子を前回(2月16日号掲載)お伝えしました。会場では、テーマである「文字」にまつわるアートが展示されているのですが、好評で1カ月延期されるという連絡を受け、花が咲いたように喜んでいます。

「春若不耕、秋無収穫:春に耕さなければ、秋の収穫は無し」。昨年の春にユニオンスクエアで発表した企画が台湾に届き、夏に参加依頼を受け制作を開始。文字本来の意味である「気持ちの伝達」を焦点に、今昔の方法をミックスしてアートに取り入れました。伝統的な方法として伝書鳩や掲示板を取り上げ、インターネットなどのメディアは現代風。ニューヨークから準備を始め、高さ3・5メートル、横5メートルの掲示板は、私を含めて5人のスタッフで3週間かけ設置しました。特に大変だったのは、伝書鳩の飼い主にボランティアで参加協力を依頼することで、連絡や説明に相当な時間を要しました。

隣の若いアーティストの作品は、CD1枚の中に彼のアートが全部入っていて、スクリーンだけのセッティングであっという間に完成。そういう若いアーティストやスタッフから「伝統的な表現方法は苦労しますね。1カ月前から会場に入り掲示板を手作りし、鳩集めも自分でするなんて大変じゃないですか?」とよく聞かれました。

「今は車もあるし道路も整備されているので、大変といっても昔ほどではないでしょう。私のアートは本能の表現であり、30数年同じ道を歩き続けても、感動や美の再発見は毎回違う。修行ではないけれど、制作には最高の熱意と好奇心を持ち行動しているので、苦労に比例して大きな喜びが得られます」。結局、協力してくれた10数人の鳩の飼い主は、次もまた参加したいと言ってくれましたし、掲示板やスクリーンで携帯電話の寄付も呼びかけたので、約2000個が集まり、大きな収穫が得られました。今年も春が来たので、次の収穫に向けて夢の種を蒔くとしましょう。

(次回は6月8日号掲載)

林世宝

〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック

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