倫理経営模範企業となることで社員数だけ実践者が生まれる

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日本倫理研究所 台湾事務所代表・亜細亜台湾企業倫理促進会理事長
ヒロ大島氏

〈インタビュー〉

イベントでのヒロ大島氏(提供写真)

イベントでのヒロ大島氏(提供写真)

日本全国に6万9000社の会員企業(倫理法人会)を擁する一般社団法人倫理研究所は、米国以外にもブラジル、台湾などで海外組織の拡充を図っている。諸外国では、企業倫理の推進と共に、国情に応じて地球倫理の実践活動を展開する。今回は、2016年に設立された「亜細亜台湾企業倫理促進会」理事長のヒロ大島氏にお話を伺った。

◆ ◆ ◆

ヒロ大島氏はかつて広告会社の「台湾電通グループ」で働いていた。その時の同僚を通じ、日本の倫理研究所の一人から「純粋倫理を台湾の中小企業界にも広めたい。力を貸してほしい」と相談された。これが、倫理法人会との出会いだった。15年7月に東京で丸山敏秋理事長と面会、同年11月には台湾で同理事長の講演会が実現した。続けて、台湾政府に社団認可届け提出、翌年の16年5月に「亜細亜台湾企業倫理促進会」が正式に設立された。

普及には言葉の壁

大島氏は「頼まれると断れない性格」だという。会の設立はトントン拍子に決まったものの、普及には多くの壁が立ちはだかっていた。日本や米国と違い、全て中国語を使わなければならない。日本の書籍は翻訳し、日本人講師による講演は通訳と同時にスクリーンにも講義要点とビジュアルを流すなど手間と時間がかかった。

孔子・孟子との違いの説明も必要に

また、台湾の人たちは幼い頃から孔子・孟子の哲学を学んでいるため、〈今さら日本人から倫理道徳を学ぶ必要はない〉という企業経営者もあった。そこで、伝統的な哲学と倫理経営の違いを説明する必要があった。さらにネックとなったのは、国内720カ所で週1度の「経営者モーニングセミナー」による入会誘致と会員交流や、各種会員報や月間誌『職場の教養』などの贈呈という特典を、日本と同じように提供できないことだった。

KISSME化粧品社長の感想文が契機に

そのため初めから企業会員の入会誘致は困難を極めた。だが大島氏は決して諦めない。7月には集めた17人の会員を連れて、静岡県御殿場市にある倫理研究所の宿泊研修施設「富士教育センター」で倫理経営研修を受けた。参加者の一人、台湾KISSME化粧品の社長リリアン・リーさんの研修感想文の一文に目を引かれた。

当時リリアンさんは、2代目の経営者として社員たちの融和に悩んでいた。リリアンさんは大島氏に、「研修で学んだ『万人幸福の栞』十七カ条が、自分の心に深く刺さった。これこそ違う部署社員200人に共通する言葉だ」と述べた。大島氏は、「それなら社員を集めての研修を受けたらどうか」と提案。その後、全5回にわたり同社で「倫理経営模範企業育成研修」が行われた。すると研修を始めてからわずか1週間を過ぎたころ、「遅刻がなくなった」「毎朝のあいさつや整理整頓が始まり、社内の雰囲気がよくなり会社への求心力が高まってきた」などの結果が表れた。また各部署独自の『活力朝礼』も毎週行われ、18年3月、同社は倫理研究所から「倫理経営模範企業」の第1号として認定されたのである。

全社員で遂行が目標

「倫理の学びは経営者が自分一人で消化してはもったいない、全社員で遂行して企業文化を高めるのが目標だ」と、大島氏は語る。社員全員が倫理を学び実践する時、初めて倫理経営の目標は達成する。「言葉や文化が壁になり200人の会員を集めることは難しくとも、会社が研修を行って倫理経営模範企業となることで、社員数が200人なら、その数だけ倫理の実践者が生まれる。これこそが、倫理経営の実践ではないかと思います」と大島氏は語る。

第2号、第3号と認定

今年5月の3周年記念大会においては丸山理事長から、龍笛服飾に模範企業第2号を、デニス制作には第3号候補の認定書が授与された。内田文朗国際部門担当常任理事からも「台湾での倫理経営の浸透を今後も楽しみにしています」と喜びの声が届いたという。

設立から3年、さらなる飛躍を目指す亜細亜台湾企業倫理促進会(中央がヒロ大島氏)(提供写真)

設立から3年、さらなる飛躍を目指す亜細亜台湾企業倫理促進会(中央がヒロ大島氏)(提供写真)

 

●プロフィル●
ヒロ 大島(Hiro J. Oshima)
現職:日本倫理研究所 台湾事務所 代表・亜細亜台湾企業倫理促進会理事長
経歴:アメリカ日立家電宣伝広報部長(NY/Calif.居住)、McCann-Erickson台湾創設社長、台湾電通Commex社長
学歴:国立台湾大学経済学部卒、米オクラホマ州大大学院卒
国籍:米国・台湾

(2019年9月21日号掲載)

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