〈コラム〉チアリーディングはスポーツ? 正式な競技として安全対策を行うべき

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日本クリニック「医療の時間」第31診

チアリーディングは、もはやジャンプしたり、ポンポンを振る楽しいスポーツなだけでなく、高度な身体能力を必要としたれっきとした運動競技なのです。そして高度で激しい運動の陰には、けがの危険性も秘めているのです。
今月、雑誌「Pediatrics」に掲載された新しい方針によると、米国小児科学会はチアリーディングを正式な運動競技と指定し、安全なルールの作成や公認トレーナーやコーチをつけることなど、より良い監督下での練習が義務付けられるとしました。
現時点では、チアリーディングの安全なルールは定められていません。他のスポーツ選手のように、特定の訓練や調整のための運動、チームに所属するための健康診断などは義務付けられていません。そして監督の多くは、ときに、けがを伴う危険なスポーツだということを認識していないのです。
米国には6歳以上のチアリーダーが300万人いるといわれています。そのほとんどが少女で、そのうち40万人が高校生です。チアリーディングは過去20年で急速に進化し、今や、サイドラインでただ飛び跳ねながら応援するだけではありません。いくつかの学校は国内の他のチームと競争させるために、強化チームを別に作るほど熱心で、激しい練習と高度な技を駆使するため、深刻なねんざ、腕、足、首の骨折や脳振とうなどのけがを起こしがちです。
器械体操、サッカー、ラクロスなどの他の女子スポーツと比べても、もともと頭蓋骨骨折や、まひの要因となる脊椎の骨折などの重篤なけがの率が多かった上、発生率はチアリーディングの人気に比例して増加しています。
ここ20年で、チアリーダーのけがの数は劇的に増加しています。よくあるスタントで危険なのは、チアリーダーを空中に投げたり反転したりするもの、15フィート(約4・5メートル)以上もある人間ピラミッドなどです。昨年、3万7000人(6歳から22歳)がチアリーディング中に起こったけがで救急搬送されています。この競技がもっと穏やかなスポーツだった1980年と比べると4倍の数です。
チアリーディングは正式な競技として安全対策を行うべきです。私たちの子供たちが国内大会で安全に競い合えるためにも、他の競技で採られているのと同じだけの、安全のためのルールや練習器具、資格を持ったコーチを配属することなどが必要でしょう。
(次回は12月15日号掲載)

drvitale〈今回の執筆者〉ケン・ヴィターレ医師/Kenneth C. Vitale, MD
日本クリニック/15W 44th St. 10FL. NY,NY 10036
スポーツ医学、理学医療科、リハビリテーション科。

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