〈コラム〉座位 VS 直立姿勢 わずかに直立姿勢の方が良いが全く運動を取り入れないのは危険

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日本クリニック「医療の時間」第48診

近年、一般成人へ健康的な生活を送るために推奨されている運動量は、中等度から強度の運動を最低、週に150分することですが、それ以外の時間についてはどうなのでしょう? 最近、座位生活の研究が非常に進んでいます。数多く行われている最近の研究からは、いくつかの国で座位時間と死亡率の明らかな関連性が確認されています。その結果からは“座位習慣”と“運動”は全く異なるリスクファクターと捉えるべきだと推奨しています。例えば、よくある話ですが、毎日必ず30分運動をするけれど、その他の時間はほぼ座りっ放しという生活をしている人がいるとして、そのような生活が本当に健康的かどうかということです。
もし“運動すること”が良いことで“座位生活”が悪いことだとするとしたら、では“立ったままの生活”はどうなのでしょう? このことについて最近大きな研究結果が発表されました。1万6000人を対象に12年以上かけ、彼らの仕事や余暇や運動量などを調査したところ、調査結果は非常に興味深いものとなりました。余暇の運動時間に関係無く、一日ほぼ直立姿勢で過ごしていると報告した人は、そうではない人に比べて33%死亡率のリスクが低く、さらに直立姿勢時間が長ければ長いほどリスクが減ることも分かりました。
しかしながら、ある一つのグループでは、長時間直立姿勢で過ごしていたにもかかわらず、死亡率の危険性がわずかに上がっていました。このグループは推奨されている週150分の運動をこなせていない人たちでした。しかも、主な死亡原因は、長期間の直立姿勢からくる動脈硬化などの血管の変形でした。
このことから問われることは、直立姿勢での生活は危険か? 座位生活のほうが良いのか? ということですが、さらなる研究からは座位と直立姿勢の死亡率比の相互関係は―0.52でした。ということはわずかに直立姿勢でいる方が良いということです。 ただし、一日中、直立姿勢のまま動かず、生活に全く運動を取り入れていない場合は危険です。散歩、掃除、買い物、ストレッチなど、どんなことでもいいので動くことを生活に取り入れましょう。
近年、加速時計などのモニターテクノロジーが急速に向上してきています。これらのテクノロジーで、人間の睡眠から活発な運動時の動きまで詳しい動きの分布を測定することができる時代です。私はこのテクノロジーが、引き続き私たち現代人の一日の活動量の少なさに警鐘を鳴らし、少しでも座位時間を減らすことができ、運動の大切さを示し健康への関心を向上させるのではないかと期待しています。(参照:米国スポーツ医学学会研究報告)
(次回は6月第4週号掲載)

drvitale〈今回の執筆者〉ケン・ヴィターレ医師/Kenneth C. Vitale, MD
日本クリニック/15W 44th St. 10FL. NY,NY 10036
スポーツ医学、理学医療科、リハビリテーション科。

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