〈コラム〉従業員のワクチン接種方針(2)

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既存の休暇を加増するのでなく、新方針を

「マネジメントへの手紙」
マネジメント・コンサルタント/プロフェッショナル・コーチの視点から
HRMパートナーズ社 副社長及びパートナー 上田 宗朗
第48回

前回=3月20日号掲載=に続き、オフィス再開プランの再検討に向けた米国内企業の実情をお伝えします。

前回は、EEOC(雇用機会均等委員会)が「接種の義務化は可能」との見解を出してはいるものの、コロナ・ワクチン接種を望まない従業員からの反発や訴訟リスク等を考慮すると、ビジネス上の明確な理由がないのであれば少なくとも現時点では任意レベルに留めておくのが無難であり、接種を推奨するのであれば奨励金制度など何かしらのインセンティブをつけることも考えられたら良いかもしれません。と寄稿しました。

これについて多くの問い合わせがあった為、今回も前回の記事を更に細かく解説したいと思いますが、先ず分けてお考え頂きたいのは、その従業員の職務が会社または工場や倉庫でしか遂行できない仕事なのか否かという点です。前者であれば、企業は大抵の場合、従業員にワクチン接種を要求する権利を元から有する為、特定の障害や宗教上の理由などの例外を除いて、ワクチン接種にインセンティブを提供する必要はないと考えますし、また、このような事態に一々インセンティブを提供すれば、これを当たり前と捉える風潮が強まる可能性もあることから、労務管理上、好ましい方向に進まないことも考えられます。対する後者の、従業員の職務が自宅から継続して行い得る場合、従業員がオフィスに来るよう要求されない限りはワクチン接種を推奨すること自体が不必要かもしれません。

次いで提供するインセンティブについて。上述した如く、出社を求めるビジネス上の明確な理由があるのであれば検討されて良いと言えますが、但しインセンティブとは言っても、それはあくまでもワクチン接種に費やす時間相当の2時間あるいはワクチン接種後の体調をも慮っての4時間これら1日以内の有給無給いずれかの短い休職時間を提供することを意味し、これら以外の何かを奨励したり報奨したりする必要はないということです。ワクチン接種とその後の体調の為にこれら以上の別種のインセンティブを出せば、それこそワクチン接種を断る従業員との一貫性の面で不公平感が生じる事にもなりかねないからです。

これに絡んでは、NY州ほか幾つかの州は、ワクチン接種する従業員に対して、無給(または有給)いずれかの休職を認めなければならない、というルールを策定し出してきています。

以上のことを合わせて考慮すれば、仮にコロナ・ワクチン接種を行う従業員に有給休職時間を提供する際は、既存の有給休暇や傷病休暇に数時間分を多く付与する方法ではなく、例えば、期限付き且つワクチン接種の証拠を提出することを条件にした、コロナ・ワクチン接種向けの新方針を設け、且つ、申請用紙の方も既存のものを流用せずに新たに作られるべきでしょう。

(次回は5月第4週号掲載)

上田 宗朗

〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう 富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。

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