〈コラム〉米国税関で1万ドル以上の現金を押収されたら

0

四つのオプションあるが、持ち込まないのが最善策

米国に来る国際旅行者は、米国に着陸する直前に配布される税関申告書には馴染みがあることでしょう。旅行者はこの申告用紙を使って特定の種類の財産を申告する必要があります。特に1万ドルを超える現金は必ず申告しなければなりません。もし米国税関・国境警備局の職員が1万ドルを超える現金を携帯していることを発見した場合、この現金は押収されます。

現金が押収された場合、税関職員は現金を押収した証拠として通貨目録表(Currency Inventory Sheet)と預かり証(Custody Receipt)を発行します。押収に続き、米国税関・国境警備局は押収通知書及び請求者への情報(Notice of Seizure and Information to Claimants CAFRA Form)を発送します。

この通知書には以下のようなオプションが記載されています:

(1)没収された現金の返還を求めるため、通知から30日以内に行政請願書(administrative petition)を申請する。請願書には、現金が返還されるべき理由と押収された現金の源泉を説明する必要があります。米国税関・国境警備局は請願書を調査した後、請願者が押収された金額の3%~12.5%を妥協金として支払うことで、残額の返還請求に応じることがあります。
(2)妥協案を提示する。妥協額は最低でも米国税関・国境警備局が示している金額でなければなりません(前述参照)。このような妥協案には、妥協額の銀行支払保証付き小切手を同封する必要があります。もしこの提示が拒否された場合、没収に係る訴訟開始を要求することができます。
(3)押収された財産を放棄する。
(4)没収に係る訴訟開始を要求し、返還請求権かあるかどうか、裁判官の判断を仰ぐ。

実際問題としては、上記(1)の請願書を出す方法が最も望ましいでしょう。しかしながら、米国税関・国境警備局の業務蓄積のため、請願書の調査には数カ月、時によっては1年以上かかることがあります。時間的な問題に加えて、支払わなければならない妥協金額は、最高の場合、押収額の12.5%にもなることがあります。さらに、弁護士が米国税関・国境警備局に書類を提出する必要がある場合もあります。出費は急激に増えていくでしょう。

最善策としては、最初から問題が起こらぬよう1万ドル以上の現金を国境に持ち込まないことです。米国に滞在中、1万ドル以上の資金が必要になる場合は、事前に銀行口座を開設して米国内で資金を引き出すことができるようにしておくか、クレジットカードを使用することをお勧めします。

(弁護士 マシュー・プレソー)

(次回は1月11日号掲載)

〈今週の執筆事務所〉
Miki Dixon & Presseau 法律事務所
122 East 42nd Street, Suite 2515 NY, NY 10168
Tel:212-661-1010
Web:www.mdp-law.com

(お断り)本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は弁護士・法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。

●過去のコラム●

Share.