〈コラム〉税務専門家への相談の勧め

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Nagano Morita a Division of Prager Metis 日下武「ビジネスのツボ」 第109回

最近、OCR(Optical CharacterRecognition)の技術が発達して、いろいろなサービスに応用されています。書類をスキャンしたり写真を撮ることで自動で書類を読み込み、システムにデータ入力ができます。タックスリターン作成システムにも応用され、アメリカの給与所得の源泉徴収票であるW-2フォームは、OCRの技術を使ってスキャンことができます。

会計士事務所が使用するプロフェッショナル用のシステムはもちろん、市販の個人タックスリターン作成ソフトでもOCRが使えます。10年ほど前から使用できるようになり、今ではかなり普及しているようです。私の周りのアメリカ人に聞くと給与所得のみの友人の多くは、市販のソフトでファイリングしています。私のクライアントは、法人、もしくは個人事業主なので、複雑で税務関係の書類が多く、スキャンしても数字がシステムに反映されない書類もたくさんあります。将来はOCRの技術が進み、あらゆる形式の書類がシステムに読み込める日も近いと思います。

ただOCRは書類を読み込んでデータ入力する機能なので、タックスリターン作成がすべてが完了するわけではありません。W-2のみだから自分のタックスリターンは単純だと思っている場合でもファイリングについての情報収集は不可欠です。例を挙げると、アメリカでは居住者の場合、FBARと呼ばれる海外資産報告書FinCEN

Form 114を提出することが義務付けられています。インストラクションには、提出をしていない場合は高額の罰金が科せられると記載されています。海外資産についてですが、例えば、アメリカ在住で、日本に1万ドル以上預金のある銀行口座を持っている方は要注意です。

最近、このFBARの提出をしていなかったという相談が増加しています。日本から来ている駐在員の方は比較的、勤務先の会社がタックスリターンをしている日系会計士事務所を使うケースが多く、FBARについてもなれているのでファイリングされているパターンが多いですが、アメリカ人と国際結婚をしてアメリカに移住しているケースは、海外資産に関係のないアメリカ人コミュニティーで生活を始めるケースがあり、FBARの情報が入ってこないことがあるようです。米国人の税理士さんに頼んでいても、FBARのことは聞かれたことがないというケースもあります。自分にどのような申告の義務があるのかを知るためにも、自分がアメリカ在住することになったケース(この例の場合は日米の国際結婚)に詳しい専門家に一度は相談するのもリスクの回避になるかもしれません。

(次回は4月第2週号掲載)

〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) Prager Metis CPAs Boston/NJ マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。

ウェブpragermetis.jp Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ

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