〈コラム〉日本の接客トレーニング

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永野・森田公認会計士事務所 日下武「ビジネスのツボ」 第88回

皆さん、日本の飲食業の接客トレーニングを受けたことはあるでしょうか。私と接客業の出合いは高校1年生の夏まで遡ります。

私は電車通学で聞くために「ウォークマン」が欲しくて母に買ってくれるようにお願いしたのですが、「自分で働いて買いなさい!」と一喝されました。一応進学校だったので勉強に専念するためにアルバイトやバイク免許など校則で禁止されていました。それでも母は「黙っておくから、夏休みに働いてきなさい」と私にバイクの免許を取らせて、なんと通勤用のバイクを買ってくれました。ウォークマンは買ってくれないのに、もっと高価なバイクは買ってくれるんだと不思議に思いながらも、ファミリーレストランのウェイターを始めました。

私は恥ずかしがりやだったので、最初のトレーニングで大きな声で挨拶をしたり、注文取りの練習などはかなり抵抗がありました。反面、接客マニュアルの内容が言葉遣いや声の大きさ、おじぎの角度など細かく徹底されていて興味深いものでした。準備のトレーニングで接客の基礎を教わったおかげで、実際にフロアに出て仕事を始めると、初対面のお客さんに「ありがとう」や「ご馳走様でした」と感謝されることに自信が増し、仕事をとても楽しく思いました。

短期アルバイトでしたので夏休みだけ働き、その給与で無事にウォークマンを手に入れました。自分で稼いだお金で始めて物を買った嬉しさは今でも覚えています。大学在学中も留学資金を貯めるためにアルバイトが必要でしたが、接客業を選択しました。フレンチレストランでは、複数の皿の持ち方、ワインの注ぎ方、シルバーのセッティングなどトレーニングを受けました。バーテンダーの仕事はバーのオーナーさんがバーカウンターのお客さんの話の聞き方、姿勢、心理学までトレーニングして頂きました。働くたびに何か学べる気がして、毎日わくわくしていました。その後、ニューヨークで食品商社の営業としてお客さんと接することとなり、アルバイトで得た経験が大いに役立ちました。

財務諸表を見ていると離職が原因で求人に費用を掛けている会社が多くあります。離職というと給与など待遇の不満と思いがちですが、トレーニングにしっかり時間を取っている会社は従業員が仕事に自信を持ち、離職率が低いようです。日本の接客トレーニングは世界遺産級だと思います。和食とともにこの日本の接客文化もアメリカでブームになって欲しいものです。

(次回は7月第2週号掲載)

business-kusaka-takeshi〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。

ウェブwww.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:[email protected] 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ

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