〈コラム〉集夢計画30 「途中下車して出会った人生の色」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第35回

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同窓会会長・片山光圓氏(左)、日本画の鈴木喜家先生(右)

今年1月下旬から台湾と日本を旅しています。台湾へは、集夢計画の一環である企画の打ち合わせで、屏東(ピントン)県が主催となり、豊富な農産物と農家の人たちをテーマに行動アートを展開するというもの。この企画については、秋頃にご紹介できると思います。
ミーティング後、台北の実家に立ち寄ると、日本から1通のハガキが届いていました。それは、25年も前に卒業した名古屋造形大学の同窓会への案内状。一度も参加したことがない同窓会は、今年で40周年。めったにない機会なので、ニューヨークに帰る予定を変更して日本に行くことにしました。
久し振りの名古屋で、ボランティアの瀬戸さんと一緒に知り合い巡りをすると、結婚し子供ができた人、亡くなった人とさまざまで、笑いあり涙ありでした。
同窓会当日、残念ながら同級生の参加はなく、ただ一人、日本画の鈴木喜家先生が私を覚えておられ、出席者名簿を見ながら紹介してくれました。同じ大学で学んだ人と話すと、自分たちがあこがれ目指していた印象派、写実派、未来派、ポップアートといった分野を必死に追い続けた若き日の情熱が蘇ってくるようでした。その情熱は、まるでゴッホの絵のように熱く私の頭の中に描かれたのですが、後から思い出そうとすると、ピカソの抽象画のようになり、更には、曖昧ではっきりしない印象派のモネの絵のようになってしまいます。もう一度会って話をしたかった田代有樹女先生は、急に亡くなられたとかで、曖昧な記憶の人のままになってしまいました。
人生のスピードが速いのに対し、アーティストの夢は多いので、今の瞬間を大切に、思い立ったと同時に行動しないと、できないまま終わってしまう。途中下車の旅でふれた生老病死、喜怒哀楽はユニークで貴重な人生の色との出会いでした。白黒のデッサンの上に、人生経験を全部色で重ね、最後にカラフルな1枚の絵を完成させるのが私の目標です。
皆さんもたまには途中下車して、人生の一場面を楽しんでみませんか。    (次回は5月第2週号掲載)
ShipPaoLin-1 〈プロフィル〉 林世宝(リン・セイホウ) 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック】www.facebook.com/lin.shihpao?fref=pb&hc_location=friends_tab&pnref=friends.all

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