〈コラム〉〈S-corp〉という会社形態 「Self-employment tax」を一部非課税にできる

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「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第38回

今年の冬は雪が多く、雪かきにうんざりですが、先日、西海岸から出張にきた方は、雪は綺麗ですばらしいといっていたのを聞き、物事は取りようだと反省しました。
さて、最近は一人で会社設立をするという時のご相談が増えてきております。こういうケースの場合、現在は〈LLC〉という会社形態を選択する方が多いですが、今回はあまり知られていない〈S-corp〉という会社形態をご紹介したいと思います。
〈LLC〉と〈S-corp〉は基本的にはよく似ています。強みというと両方とも有限責任ということと、タックス上、パススルーという法人税レベルで課税されず、個人レベルだけ課税される方法を選択できるというところです。それでは、〈S-corp〉だけの強みは何かというと「Self-employment tax」を一部非課税にできる可能性があるということだとです。
「Self-employment tax」とは自営業者が得た所得に掛かる税金のことで、税率は、2014年はSocial Security 12.4%(上限11万7000ドルまでの所得)とMedicare 2.9%(無制限)で15.3%(2014年)と決して低くありません。〈LLC〉でパススルーされた利益には基本的に個人レベルでこの税金が課税されます。〈S-corp〉では給与と配当に分けることにより、一部を「Self-employment tax」から非課税になる場合があります。
例えば、10万ドルの利益を得たとします。この全てを給与としてオーナーに支払った場合は、〈S-corp〉側で7.65%(7650ドル)、そして個人側で7.65%(7650ドル)の合計1万5300ドルが課税されることになります。極端ですが、利益10万ドルを給与ではなく、distribution(配当)としてオーナーにパススルーした場合、非課税になります。言い方を変えますと給与でもらう場合より、1万5300ドルが節税できることになります。ただ、注意をしないといけないのは、リーズナブルな給与を支払った上で配当としてパススルーすることが必要ということです。このように全ての利益を配当扱いにするのはIRSも黙っていません。配当の前に妥当な給与をオーナー自身がきちんと受け取り、「Self-employment tax」を支払っているかという調査があります。
以前、裁判がありました。あるCPAが自分がオーナーである〈S-corp〉から年間の給与として2万4000ドルを受け取り、配当を22万ドル受け取っていたのですが、IRSがこの給与額は不当に低いと申し立てをしました。裁判所では、そのオーナーのそのビジネス上の経験、義務と責任、その充てた時間、労力などを考慮に入れ、その配当のうちの17万5000ドルを給与として扱うとして「Self-employment tax」を課税すると言った判決が下りました。ただ2万1000ドルについては配当して認められ、〈LLC〉と比べると少しは節税になったともいえます。〈S-corp〉には設立の規定もありますが、〈LLC〉と比較しながら考えてみるのもいかがでしょうか。
(次回は4月第2週号掲載)

takeshi%20001[1]〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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