〈コラム〉さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第33 回

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着床前診断33  ~一般的な着床前診断に関するよくある疑問(3)~

次世代シークエンスに注目

前々回(6月6日号掲載)から、着床前診断に関するコラムを締めくくりとして、着床前診断に関するよくある一般的な疑問について解説をしています。
着床前診断のコラムを開始してから2年半以上が経過していますが、その間にも、技術や方法論が急速に進化していることを受けて、 今回から、 この30回に及ぶ着床前診断のコラムにもまだ書かれていない、現在一番進化している技術について触れたいと思います。

着床前診断は新たな技術が続々と出てきているが、現在一番進化している技術は何か

2015年現在、最も世界中で普及している着床前診断の技術はaCGH(アレイCGH)ですが、誤診と不明な結果を含め、エラー率が少なからずあることは、 専門医も必ず当技術を利用する患者さまに説明しています。当コラムでもエラー率について説明してきました。
着床前診断で、染色体の異数性を検査する技術の中では、aCGHよりも精密かつ短時間で結果が得られる方法は、qPCRです。米国では、米国生殖医療協会内の各専門のプロフェッショナル小委員会が存在し、コンファレンスが盛んに行われています。着床前診断に関する議論は繰り返し行われており、このqPCRの主要な研究者であるDr. Richard Scottは、着床前診断のコンファレンスでも第一人者です。この方法はまだ少数の優れた検査場でのみ可能で、未だ米国でも普及していませんが、今後の展開が期待できます。
現在の多くの着床前診断は染色体の異数性を問う技術になっています。これは多くの臨床試験で、正倍数性の染色体を確認したあとの受精卵移植は着床率を上げるという結果が得られていることからも理解できますが、この1年ほど前から、この傾向を変える、新しい着床前診断技術が登場しました。NGS(Next Generation Sequencing)、次世代シークエンスと呼ばれるものです。シークエンスとは、DNAを構成するヌクレオチドの塩基配列順序の決定を意味します。次回はこの新しい技術について説明します。
(次回は9月第1週号掲載)

 

sakura life profile Photo〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/

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