〈コラム〉卵の話 若く見えても妊娠適齢期は延ばせない

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“生理があるから妊娠できる”は勘違い

コウノトリのコトバ-生殖医療の現場から 第2回

New Hope Fertility Center Dr. John Zhang

 

米国では若々しく見える女性をよく見かけるが、どんなに頑張っても女性にはどうしても年齢が誤魔化せないことがある。それが卵子。

「毎月新しい卵子ができる」と思っている人が多いが、残念ながら卵子は老化する。この事実をクリニックに来て初めて知る患者は決して少なくない。

卵子は老化するだけでなく、数も決まっている。胎児のころには約600〜700万個。生まれ出るころには約200万個まで減ってしまう。そこからさらに初潮を迎えるころには30万個になり、ずっと減り続ける。45歳で約1000個、50歳になると、なんと0になる。

だから「仕事が落ち着いてから赤ちゃんを…」と思ったころには、卵子は老化し、数も少なくなっているため、自然に妊娠すること自体が奇跡的になってしまう。

女性のライフスタイルが変わり、結婚適齢期もなくなって平均寿命も延びたが、「妊娠適齢期」や「分娩適齢期」は不変で、女性の生殖年齢は大昔から全く変わっていない。

また、生理があるうちは妊娠できると思っている人がとても多いが、とんでもない勘違いだ。排卵がなくなった後も、卵の周囲の細胞が10年ほどホルモンを作り続けるため、生理が起こる。このため健康な女性でも閉経の約10年前から妊娠できなくなると言われている。

平均寿命が80歳になろうが、40歳が30歳の若さに見えようが、閉経の年齢は延びていないし、卵巣の寿命も大昔から変わっていない。それなのに、今は35歳でも心配せず、40代でも普通に妊娠・出産できるという錯覚をしている。

高度生殖医療も進み、出産までのプロセスでの危険を防ぐ医療も進化している。その一方で、勘違いと錯覚のために、みすみす子供を持つチャンスを逃している人が増えている。妊娠できた人でも、もうちょっと早く来院してくれていたらもっと楽に妊娠できたのに、という人も非常に多い。

生殖年齢=妊娠適齢期を延ばすことは、現代の医学にも超えられない壁だ。その厳しいともいえる事実を知ることから、全ては始まる。
(次回は7月第4週号掲載)

Dr. John Zhang〈クリニック〉 New Hope Fertility Center 世界トップレベルのスペシャリストが集結、ライフステージに合った家族計画をサポートしている。不妊治療、体外受精を望むカップルだけでなく、将来のために卵子凍結を行いたいシングル、ドナー精子、卵子での挙児希望者、また、ドナーとして卵子提供者が利用できるクリニック。2004年の開院以来、多くの成功事例を持つ。米国内以外にロシア、メキシコ、中国にも分院を設立、運営している。
【ウェブ】www.newhopefertility.com/

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