〈コラム〉ケン青木の新・男は外見 第111回

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“スーツ”について その12
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引き続きスラックスについてです。私たち日本人が洋服が立体であることをあまり理解をしていない証明となるかもしれないお話です。スーツと言えば上着に目や気持ちが行きがちかもしれませんが、終日身に着けているのは、実はスラックスの方であり、上着もスラックスもスーツというユニットを構成する上で等しく大切なのだと、ぜひ、ご認識をあらためていただきたく。

米国で、いわゆる「ズボン・プレッサー」が販売されているのを店頭などで見たことがおありでしょうか? 見られた方はほとんどおられないのでは? 販売は主に英国のCorby(コルビー)というメーカーでして、ヨーロッパのホテルでは部屋に用意されていることがあります。

ズボン・プレッサーは、平面にスラックスを置いて両側より強く挟み、電気で熱を加えることによりシワを取り、折り目もつけてしまおうという装置なのですが、基本的にスラックスが立体的構造物であるとの前提に立ってませんよね。直線と平面でできたモノとの意識でなければあのような装置を思いつくことはないはずですし、また購入する側もそう思っている故購入するわけで、明らかに間違った認識です。

仕立ての良いスラックスとは、実はフラットな台の上に置いてもスラックスそれ自体がフラットとなることは決してありません。腰周りや膝のなど、こんもり盛り上がりますし、特に先日来お話しております、生地の「くせ取り」がしっかりされたものはスラックス全体がS字型のシェイプを描いていることでしょう。注文服と言えばスーツやジャケットを思い浮かべる方が多いと思いますが、まずスラックスからお試しになられた方が既製品との違いがよりハッキリ理解できるかと。スラックス全体が体の動きに瞬時についてくるのが感じられるはずです。お客さまから、「お宅のスラックスはズボン・プレッサーにかけにくいと女房がブツクサ言ってたよ…」というお話を何度か頂戴したことがありますが、実際その通りでして、原因はスラックスの膝の部分にしてある加工にあるのですが、これにつきましてはまた次回ということに。それではまた。

(次回は7月9日号掲載)

32523_120089421361491_100000813015286_106219_7322351_n〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。

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