〈コラム〉ケン青木の新・男は外見 第51回

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紳士服“着装”のゴールとは


私たち日本人、けっこう“トレンドが好き”ですよね(笑)。決して悪いことではなく、時代と共に生きる、とても大切なことで、流行とはそうした感性をフォローするものと思うのです。でもそれだけでは“男の人生”何か不十分とはいえないでしょうか? 流行の服を着ていれば10年、20年後、今の写真を見て年代を特定するのに便利でしょう(笑)。で皆さん、一体何のため紳士服を身に付けておられるのでしょう? 仕事のため? もちろんそうですよね。周囲や取引先からの信用、信頼を得るため紳士服をキチンと“着装する”ことはとても大切。でも、それだけでしょうか?
皆さんは紳士服を“着装”(あえて“着装”という言葉を使ってます)する目的、別の言葉で言えば最終目的をどこに置かれているのでしょう? 私は会社勤めの方は定年後、ビジネスオーナーの方ならば引退後、ご自身がどのようなスタイルで老後を過ごされるのかをゴールとされるべきでは、と思います。そのためにファッション・トレンドだけでなく、紳士服の本質に根差した知識を増やしつつ、“自身のスタイル”を創り上げていくための経験を積んでいくことが大切と思うのです。海外の企業と仕事されている皆さんは、定年、引退されても外国の方とのお付き合いが無くなることはまずないでしょう。そのような時、何をどう着るのか、想像以上に見られているものです。名の通ったレストランに予約なしで訪れることとなりました。片やジーンズにスニーカー、ジャンパー姿、片や仕立ての良いジャケットにカシミアのコートを羽織り、襟元にはシルクのスカーフ、プレスの効いたフランネルなどウールのスラックスにこげ茶のスエード靴。果たしてどちらがより早く良い席を得る可能性が高いでしょう? 日本では平等に対応するのが当然ですが、欧米においては必ずしもそうではありませんよね…。
それではまた。

(次回は11月第4週号掲載)
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〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。

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