〈コラム〉米日教育交流協議会・代表 丹羽筆人「在米親子にアドバイス」日米の教育事情

0

海外では、より「キャリア教育」が重要

将来どんな社会人になりたいかということを考えたい

日本では、2月の代名詞ともいえる「入学試験」もピークを超えました。第1志望校に合格できた受験生もいれば、そうでない受験生もいると思いますが、大変な受験勉強を乗り越えたことで大きく成長したのではないでしょうか。
米国に暮らしていると、入学試験を経験しないで大学まで進学することができます。大学入学のためには書類選考がありますが、高校入試も中学入試もありません。また、大学も日本のように筆記試験の得点のみで合格者を選考するようなことはありません。SAT(Scholastic Assessment Test)やACT(The American College Test-ing Program)は筆記試験といえますが、日本の大学入試センター試験とは異なり、複数回受験できます。高校の成績や諸活動の記録、推薦状、志望理由書など、多数の書類を審査して選考されます。
日本でも米国のような書類審査によって選考するAO(Admissions Office)入試が登場し、多くの大学で導入されています。筆記試験では獲得できない優秀な人材がほしいという大学の思いが表れています。しかし、AO入試で獲得した学生の学力が低いという問題が露見し、AO入試でも筆記試験を課す大学が増加しつつあります。なかなか米国型の入試システムは定着しないようです。
ところで、筆記試験の場合、得点の高低で合否が決まりますが、1点差で合否が分かれることも往々にしてあります。受験者数の多い学校では、ボーダーライン(合否の分かれ目)に多数の受験生が存在することもあるようです。その際は、学校の成績などの書類審査で合否を分けるようですが、男女、出身地など、成績とは無関係な要素で判定される場合もあるようです。いずれにしても、筆記試験重視の日本型と書類選考重視の米国型とのどちらが公平なのかは議論の分かれるところです。
一方、日本では目標校に合格できればそれでよしとする風潮も目立ちます。そのため、入学がゴールになってしまい、入学したものの、その後の目標が見えなくなってしまったとか、授業についていけず、いつも劣等感を抱いているというような声を聞くこともあります。もちろん、目標校合格に向かって努力することはとても素晴らしいことですが、もっと先の人生を見据えた目標を掲げて常に前進することが大切だと思います。具体的には、学校を卒業した後に、どんな社会人になるか、つまり、どんな仕事をして社会に貢献するかということを考える必要があると思います。そのために、子どもの頃から職業について考える機会を作りたいものです。
先月末、中央教育審議会が「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育のあり方について」の答申案をまとめました。「キャリア教育」は、日本の社会や日本の職業をイメージしにくい海外では、日本人学校や補習校が担う重要な役割だと思いますし、家庭でも意識すべき点だと思います。
(次回は3月26日号掲載)(「WEEKLY Biz」2011年2月26日号掲載)
◇ ◇ ◇
米日教育交流協議会のウェブサイトにて、当コラムのバックナンバーもお読みいただけます。
UJEEC Website: www.ujeec.org

過去の一覧

Share.