〈コラム〉オファーが拒否される理由 ローン利用、財務状況での瑕疵などに要注意

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タイチ不動産「不動産と住まい事情あれこれ」第107回

ニューヨーク不動産市場は競争が激しいです。需要が供給を上回り、掘り出し物はマーケットに出て数日でクロージングされていきます。気に入ったアパートを見つけたらまず購入オファーを申し出てそれをセラーが受け入れる必要があります。

アパートが見つかればブローカーからセラーのエージェントにオファーを提出します。あなたが選んだ物件が魅力満点な掘り出し物ならきっと数日後にエージェントから既に複数のオファーがあるとの連絡が入るでしょう。あなたとブローカーは近隣の類似物件の売買実績などを精査して可能な範囲のプレミアムを追加しての再度のオファーが必要となります。セラーの希望売却価格とバイヤーの希望購入価格が一致しないのは当然です。もしオファーが拒否されれば他のバイヤーの買値が上回ったわけで、往々にしてセラーの希望売却価格を上回るオファーがあっても不思議ではないマーケット状況です。

現金は王様です。同じことがアパートの売買にも当てはまります。あなたがより高額のオファーをしていてもローン調達に要する時間を嫌うセラーは一般的に低い金額でもオールキャッシュのオファーを受ける傾向があります。ローンを利用する際に銀行が何らかの理由で融資を却下する際は売買不能となります。オールキャッシュのバイヤーにはそのような資金調達に関わるリスクがありません。

最初のオファーにも注意が必要です。オファーとその後のカウンターオファーはしばしばバイヤーとセラー間の会話のようなものです。会話が開始され数度にわたる価格交渉やさまざまな不測の事態を経て当事者間を行き来します。もし最初のオファーが非常に低くセラーにとって必要とはみなされない場合、セラーはその後の交渉することを止めるでしょう。あなたにはカウンターオファーのチャンスが提供されずに会話は途切れます。

財務状況は複雑です。所得、資産、債務、クレジット等などから成り立っています。いずれかで瑕疵(かし)があれば、望ましいバイヤーとは看做(みな)されません。ローンのプリアプルーバルはモーゲイジを保証するものではありません。オファーと一緒にブローカーは財務状況のスナップショットをセラーに提出しますが、あなたの財務が弱くない場合でも、他のバイヤーと比較して弱いと見なされるかもしれません。セラーは安定した高額所得者で資産が多く負債が少ない信用度が高いバイヤーを好みます。当然、融資停止のリスクが軽減されます。

コープ売買のプロセスはバイヤーを徹底的に審査する点で独特です。詳細なアプリケーションで個人情報を審査し、ボードによるバイヤーへのインタビューも行われます。アパートをクローズする能力のみを審査するコンドとは異なり、コープはアプリケーションプロセスのあらゆる要素に独自の判断を下すことができます。コープボードはローンの貸し手の銀行より厳しい財務ガイドラインを持つことも多いです。取得しようとしている住宅ローンのサイズに対して財務状況が不安定な場合、ボードは他のバイヤーを選ぶ可能性があります。

(タイチ不動産 茂古沼孝)
(次回は2月第3週号掲載)

記事提供:タイチ不動産
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