〈コラム〉法律の専門家がお答えします

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senmonka

今週は「シンデル法律事務所」

H―1B申請をとりまく厳しい現状

 前回、前々回とH―1B申請およびH―1B保持者を取り巻く環境が厳しくなっている旨を紹介しました。申請そのものもですが、その厳格さは無事取得できた後においても、政府による監査や米国入国時の審査など多岐に渡ります。最近のこの過剰とも言える政府の対応では、H―1Bに関する関連規制を主に取り扱う労働局に加え、移民局、税関国境警備局および州による実施が目に付きます。
 例えば、米国には数多くの外国人ITコンサルタントがH―1B保持者としてやってきます。とりわけ政府は、それらITに関わる会社やH―1B保持者に対して、目を付けています。彼らの多くは高学歴で、専門能力があり、かつ業界でも社会的地位が高いことから、問題視されるべきではないと考えるのが一般的でしょう。しかし、それらITコンサルタントを抱えるスポンサー会社が、移民法に関する企業コンプライアンスを行っていないとすれば、そのITビジネスという業界的立場からも政府の捜査対象となりやすく、従業員のビザ取得およびその維持に対しては、大変不利な事態に陥ります。従って、関連するIT企業は今後米国でのビジネス活動に生き残りをかける上でも、しっかりとしたビジネスモデルが必要となります。
 一方で、ITコンサルタント業界での不当な雇用が存在するのも事実です。それに伴い、労働局はそれら詐欺による雇用を通してビジネス活動している企業に対し、厳しく取り締まる規則を既に施行しています。給与を支払うことなく従業員を雇用したり、就労地域の平均賃金以下の給与を支払ったり、申請上はカバーされていない勤務地で長い期間就労させる、というような不当雇用は違反行為の中でもよく耳にするケースです。
 仮に企業が不当な賃金や就労時間に基づいた雇用を行った場合、規則に則り労働局は監査・調査を行います。しかし、全ての業界や企業に対して監査・調査を行い、全ての違反を見つけ出すことは不可能です。先日発表された統計データから、1人のH―1B従業員の雇用に対して新たに5人の雇用が生まれるという事実があります。今後H―1Bに対する取り締まりが強化されれば、波及して生まれるこれらの雇用も見込めなくなるばかりか、H―1B保持者と米国人労働者との知識の共有も失われてしまいます。
 現在のH―1Bに対する厳しい取り締まりは、特に将来性のあるテクノロジー系の業界で新たにビジネスを行おうとしている新会社や中小企業にとっては逆風となっており、長い目で見ると、米国経済にとってはマイナスでしょう。さらに、米国の現状は世界の同盟国への不満にもつながっています。米国とも親しい関係を持つインドでは、既に米国人をはじめ、外国人の就労ビザに対する規制を開始しました。つまり、米国での厳しい取り締まりの一番の犠牲となっているインドで、逆に米国人就労者が同様の犠牲を受けているということです。
 未だ米国では多くの外国人留学生が勉学に励んでいます。米国での就労許可が下りにくくなっている今、彼らは米国外での就労を試みることとなり、結果、このままでは米国の国力低下につながる可能性があることは決して否めません。
(次号は11月13日号載)
(「WEEKLY Biz」2010年10月9日号載)
sindel_faceup〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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