〈コラム〉むち打ち症(2)

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カイロプラクター DR. 石谷三佳「骨盤・背骨の歪みをリセット」第187回

 

むち打ち症とは、単に首が前と後ろに振られるケガですが、その瞬時に起こる物理的な衝撃は、科学的にみると細かく分かれています。これを理解できれば、なぜ、むち打ち症のあと、さまざまな症状が起こるのか理解できるはずです。

むち打ち症は、なんと1秒以内の間に4段階の圧力が違う方面から首に生じます。

例えば、車に乗っている時に後ろからの追突があった場合、第1段階のケガとして、まず初めの衝撃は、真後ろから背中へ直撃、背中が前に押されると同時に、頭が後ろに下がり、その上下の摩擦で、首の上部が影響を受けます。この場合、座席頭部のヘッドレストが頭を保護してケガを防げる割合はたったの11〜20%と言われています。

第2段階のケガとして、背中への衝撃がピークに達していき、その勢いは車への衝撃よりも1.5から2倍と言われています。背中は前に押されながらも、頭はまだそのまま後ろに倒れていて、しかし、首の下から背中にかけては押される勢いがあるため、不自然なS字のカーブを首の辺りで描くことになります。この不自然な物理的原理により、多くの椎骨、関節、神経、椎間板、そして顎(がく)関節までも損傷し、「むち打ち症」の症状を発症します。

第3段階のケガとして、後ろから背中を押される衝撃は減速し、背中はシートへ沈み込むように戻るとともに、その物理的原理から、首と頭にかけては、まだ前に押される勢いが残ります。同時に、車は減速されます(もし、走っていた場合)。追突された時に、強くブレーキを踏みこむことで、さらに首への衝撃のダメージがひどくなります。

第4段階のケガが一番体をダメージに追い込みます。この最後の段階で、体はちょうどシートベルトの位置で固定され、肩も止められたままですが、頭はどこにも固定されていないので、だらりと前に倒れることになります。この暴力的ともいえる首への圧力が、ひどく首の周りの筋肉や靭帯を損傷させ、椎間板の繊維も傷つけ、椎骨の位置をずらします。脊髄や背骨の周りの神経根が傷つき炎症を起こします。脳にも挫傷が起こるかもしれません。

次回はむち打ち症の衝撃によってどのようなケガが発症するのかお話します。

(次回は9月28日号掲載)

MikaIshitani〈プロフィル〉石谷三佳(いしたに みか) 石谷カイロプラクティッククリニック院長、パーマーカイロプラクティック大学院卒、ハーバード大学医学部専門課程終了/米国、米国小児、ニュージャージー、日本カイロプラクティック協会会員/2008「Chiropractor of the Year」受賞。2015「Bergen’s Top Chiropractor」受賞。

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