〈コラム〉釈然としない医療の闇

0

倫理研究所理事​長・丸山敏秋「風のゆくえ」 第131回

コロナバンデミックから2年が過ぎても、混乱は収まる気配がない。

世界保健機関(WHO)は1月24日に、オミクロン株は重症者が少ないことからパンデミックが最終局面に入った(同株が最後の変異株になる)との見方を「危険だ」と警告した。これからも感染防止に努めよと言うのであるが、いつまで、どれくらい必要なのか?

ともあれコロナパニックは、わが国の医療体制や感染症対策の不備・欠陥を炙り出してくれた。国民の誰もが全国の医療機関で公的保険によって医療を受けられる「国民皆保険」という日本の制度は、世界的にも高く評価されてきた。ただし、少子高齢化の進展により医療費が増大し、医療保険制度の財政状況が逼迫している。

制度を支える財源の面だけでなく、毎年のように登場する高額の新薬も、医療費増大の大きな原因となっている。さらに国民皆保険は、大きな安心を与えてくれる反面、人々が安易に医療に依存する傾向を生み出している。ちょっと体調が悪いと、病院で診察を受け、沢山の薬をもらう。それが当たり前の習慣になっている人があまりに多い。自分の健康は自分で守る、という気概ある人は少ない。

症状はないのに健康診断を受けたがる人がなんと多いことか。企業には健診を実施する義務があり、従業員には受診する義務があるのは、先進国では日本だけだとか。検診によって潜んでいた病気の早期発見に結びつくメリットはあろう。しかし、一喜一憂する血圧や血液検査の基準値は、どのような根拠で決められたのであろうか。

たとえば高血圧の基準値は、日本高血圧学会が決定する。現在の基準値は診察室で140/90mmHg以上であるが、1999年以前の基準値は160/95mmHgだった。この大幅な変更によって、1600万人だった高血圧とされる人たちが約3700万人に急増したと聞く。降圧剤の需要が倍以上になったのは言うまでもない。そこに利権が絡んでいると見ない方がおかしい。

そもそも高血圧は症状の一つであっても、イコール病気ではなかろう。年齢が高くなれば血管が細く弱くなり、血圧が上昇するのは素人でもわかる。血圧が高いと寿命が短くなるというデータはあるのだろうか。人それぞれが固有の体格や体質を持っているのに、一般化(平均化)などどうしてできよう。

ちなみに、近年の日本人の成人喫煙率は男性27・1%、女性7・6%、男女計16・7%である(2019年)。1966年の男子喫煙率83・7%に比べると、その減少ぶりには驚かされる。しかし男女とも肺がんの罹患数が年々グングン上昇しているのはどうしてか。糖尿病患者が急増している理由も納得できる説明がなされていない。

医療の世界には一般人が知り得ない闇の部分が多々あるようだ。コロナパンデミックにおいては、PCR検査と、十分な治験を経ていないワクチン供給が膨大な数量にのぼった。そこに超巨額の利権が絡んでいないはずがない。釈然としないものを感じながら、もう3年目となったパンデミックの収束を待ちわびている。

(次回は3月第2週号掲載)

〈プロフィル〉 丸山敏秋(まるやま・としあき) 1953年、東京都に生まれる。筑波大学大学院哲学思想研究科修了(文学博士)。一般社団法人倫理研究所理事長。著書に『「いのち」とつながる喜び』(講談社)ほか多数。最新刊『経営力を磨く』(倫理研究所刊)。

●過去一覧●

Share.