〈コラム〉健全な規制緩和を

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倫理研究所理事​長・丸山敏秋「風のゆくえ」 第151回

日本が閉塞状態を打破して国力を充実させるには、健全な規制緩和が敢行されていかなければならない。一例として、「ライドシェア」を採り上げよう。それは文字通り、ride(乗る)をshare(共有)すること、いわば「相乗り」である。

車の貸出を目的にドライバーと車をマッチングさせるのがカーシェアリングであるのに対して、ライドシェアではアプリ上でドライバーと同じ目的地に移動したい人をつなぎ、相乗りでのドライブを支援する。

たとえば、高速道路を使った長距離を1人でドライブする場合、ガソリン代、高速代、駐車場代などは、当然ながらすべて自己負担になる。しかしライドシェアのアプリで同乗者(相乗りの希望者)を募れば、これらの費用を乗っている人全員で「割り勘」にできる。

しかし日本では、一般人が自家用車を用い、有償で他人を運送することは、いわゆる「白タク」行為にあたるので、海外のようにドライバーが運賃を受け取れるタイプのライドシェアは法律で禁止されている(ただし一部の地域を除く)。しかしすでに世界中でライドシェアが実現していることを考えれば、反対論は説得力がほとんどない。

時代はずれの古い法律がそのまま使われていたり、一部の人の利益につながる無用な規制がなんと多いことか。廃止や緩和を推進する方策はないものか。

かつてイギリスではキャメロン首相により「One in Two out」、アメリカではトランプ大統領により「Two for One rule」と称して、「新しい規制を一つ作るなら、いらない規制を二つ廃止しなければならない」というルールが導入された。このようなルールを「2対1ルール」と呼ぼう。

規制が増え続けると、それに対応するだけの体力がある企業はともかく、体力が乏しい中小企業にとっては、負担が重い。規制を緩和していくルールを導入することは中小企業支援のみならず、ベンチャー企業にとっても有益にちがいない。無用な規制は減り、若者たちは活気づく。

時代や技術の進歩によって、新しい規制は必要である。しかし規制を増やし続けると、その規制に対応するためのコストも増大し、社会の非効率が大きくなる。日本では規制がいとも簡単に作られるため、1日に約1本のペースで増え続けているらしい。

一方、既存の規制を廃止にするためには、事前調査や規制擁護派の説得など、多大な政治的コストを要する。近年の総務省資料によると、「2対1ルール」どころか、いわば逆転した「5対1ルール」のようになっているという。

ついに日本商工会議所は2021年10月に「規制・制度改革に関する意見」を発表し、事業者が負担する規制遵守費用の総量を増やさない効果を持つ「2対1ルール」の導入を検討されたい、と政府に申し出た。日本維新の会もこのルールの導入を積極的に支持している。

惰性的な規制によって利権を得ている人たちには痛みを伴うけれども、国益のために緩和を断行していく勇気を、政治家やトップランナーには持ってほしいものだ。

(次回は11月第2週号掲載)

〈プロフィル〉 丸山敏秋(まるやま・としあき) 1953年、東京都に生まれる。筑波大学大学院哲学思想研究科修了(文学博士)。一般社団法人倫理研究所理事長。著書に『「いのち」とつながる喜び』(講談社)『至心に生きる 丸山敏雄をめぐる人たち』(倫理研究所刊)ほか多数。

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