〈コラム〉先取特権とは何か─Part 2(不動産所有者VS労働者と資材供給者)

0

論争になる場合は弁護士に相談を

前回=8月4日号掲載=のコラムでは、労働者や資材供給者が、不動産に対して行った労働や資材供給の支払いを受ける権利を証明するMechanic’s Lien「先取特権」という比較的に簡単に手配できる書類についてご説明しました。不動産に対する先取特権は、不動産の所有権に疑念を提起し、先取特権が除去されるまでは売却ができなかったり、銀行から住宅ローンの貸付を拒否されたりする可能性があります。従って、不動産所有者にとって先取特権は深刻な問題となり、先取特権の除去が重要になってきます。

先取特権を除去するには、何通りかの方法があります。まず、先取特権者が支払いを受けたり、何らかの方法で請求権が満足させられたりした場合、不動産所有者に対する請求権を全額又は部分的に解除するという証明書が発行されることがあります。その場合、不動産所有者はニューヨーク州のカウンティ書記官の事務所に証明書を提出し、先取特権が除去されたことを通知します。
別の可能性としては、先取特権者が1年以内に担保権を行使しなかったり、期間延長手続きを取らなかったりした場合、先取特権は自動的に失効します。もし担保権の行使が始まる場合、不動産に対するLis Pendens(係争中の訴訟)の通知を行わなければならないので注意が必要です。これもまた、先取特権者に保証を与えるものであり、不動産の所有権に疑念を生じさせるものです。もし先特権者が請求権の追求を放置した場合、不動産所有者は先取特権者が告訴を放置したとして、不動産所有者は先取特権をキャンセルする手続きを取ることができます。この方法は、不動産所有者が請求権問題を解決しようとしていたところ、先取特権者が単純に請求権を放棄した場合に使えるオプションでしょう。この場合、所有者は先取特権を直ちに除去する手続きができます。また、所有者はカウンティ書記官に保証証券を提示することで先取特権を除去することができます。この場合の保証証券とは、先取特権の請求権に関する判決に応じて、第三者の保証会社が支払いを約束するものです。この保証証券は、先取特権の有効公期間中は、ずっと有効である必要があります。もし先取特権者が担保権を行使しようとして訴訟に負けた場合、不動産所有者は判決文の謄本をカウンティ書記官に提出して、保証証券の責任を解除することができます。最後に、先取特権の内容に欠陥や誤りがあったり、所有者や関係者に送達されていなかったりした場合、先取特権は取り消しとなる場合があります。

先取特権は、労働者や業者が不動産所有者や関係者に対する請求権を確実にするための基本的手段です。これは法的に解釈されるべきものですので、内容が有効であることを確認しなければなりません。また、申請手続きは速やかに行う必要があります。問題があって労働者や資材供給者が請求権をめぐって紛糾する場合、適時に先取特権を申請しておくことが安全策です。不動産所有者の立場からすると、先取特権は不動産の売却やローンの調達を制限する大きな障害になる可能性があります。先取特権を取り下げることは可能ですが、しばしば専門知識が必要となります。もし論争になる場合は、不動産所有者も、労働者や資材供給者も、弁護士に相談することをお勧めします。
(弁護士 マシュー・プレソー)
(次回は10月第1週号掲載)
(お断り)本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は弁護士・法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。

〈今週の執筆事務所〉Miki Dixon & Presseau 法律事務所
122 East 42nd Street, Suite 2515 NY, NY 10168
Tel:212-661-1010
Web:www.mdp-law.com

Share.